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DESTINY BREAKER 一章 2

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自分で言っておいてだが、全くその通りだと桜花は反省していた。結果的に夏樹を巻き込んでしまった今回の騒動の非は自分にあると。
それにくわえ相手が『鬼の児島』と学校中の生徒から評されている我等の担任である。レンズの厚い眼鏡の奥に光る鋭い眼光と長い黒髪を束ねたボリュームのあるポニーテールを振り乱しながら怒りに震える様はまさに暴れ馬、否、鬼である。それでも素が美人の大和撫子なもので年も二十代前半、なんだかんだで面倒見が良いということもありどちらかというと教師より姉のような人物なので生徒からの人気と人望は厚いのだが。
振り向いて心配ないからと笑顔で手を振ってみたが夏樹には見えていないようだ。
教室と廊下の間に隔てられた壁は防音に優れているようで、桜花と夏樹の会話が教室に聞こえないのと同様に教室からの音も遮断され沈黙は二人の人間はその存在感を増した。
幼少期から感情の起伏が激しいとは思っていたが、さっき抱きついてきたときと今の落ち込みようを比べるとそれは年々ひどくなっているようだ。と桜花は昔のころを思い出してそう感じた。いま優先すべきはなにより親友である。
さてどうしたものかと、昔の記憶を反芻して夏樹のあやしかた・・・もとい慰め方を考えてみる。少し考えてみて、たぶんこうすればという妙案が見つかったので桜花はとりあえず試しに実行に移すことにした。
「わたし寒いの苦手なんだよなあ。ああ寒い。誰かカイロでも持ってないかなあ。」
言いながらチラリと桜花は夏樹の様子を確認した。すると
「・・・・・・あっ!えっとそれならわたしが持ってきてるよ。えへへ、いっぱいあるから桜花ちゃんにあげるよ。ちょっと待っててね。」
と制服スカートのサイドポケットを慌ただしく探り始めた。
そしてポケットからやっとのことで抜いたその小さな手の上には袋に入ったままの未使用にもかかわらず所持者の体温によって温められたカイロがいくつか握られていた。
「どうぞ!」
「うん。ありがとうナツ。」
「どういたしまして桜花ちゃん。」
さっき泣きそうな顔していたのが嘘のように夏樹は微笑んだ。
作品名:DESTINY BREAKER 一章 2 作家名:翡翠翠