DESTINY BREAKER 一章 2
こうなると夏樹は膝枕の上で安心しきって寝ている猫のように離れようとしない、しょうがないのでいつもどおり頭を撫でてやることにした。こうすると夏樹は大きな目を細くして気持ち良さそうにする。まるでほんとうの猫のようだと思いながら、その愛くるしい姿に頬が緩んでしまう。
「太陽の匂いがするにゃあ。」
やっぱり猫だ。
はて?そういえば何か忘れているようなと、桜花が思ったそのとき
「反省の色がまったく感じられないうえ・・・。」
上目遣いで恐る恐る見上げると
「今度は、学年首席のお前もか!草薙!」
さっきの二割増しだな、コレはと、桜花は感じ同時に夏樹はピクっと震えた。どうやら正気に戻ったらしい。
「・・・軽いスキンシップ・・・なんちゃって?」
「・・・にゃうん。」
ダメもとで軽くジョークを言ってみる桜花。そして体を小さくして怯える夏樹。先生の動きが止まったので、もしやどちらかの対応が功を奏したのではないかと期待すると。先生は震えていたが笑いをこらえているようではなかった。
「なにがスキンシップか、なにが『にゃうん』じゃ!馬鹿たれ!あんたたち、そんなに女同士でいちゃつきたいんだったら、廊下に行って存分に楽しみなさい!」
という怒りにふるえる声がきこえた。しまったと思ったときにはもう遅く、私たちはストーブによってほどよく暖められた教室から、窓の隙間から北風が吹き込んでくる極寒の廊下へつまみ否、蹴り出されてしまった。
教室が笑いに満たされ、何事もなかったかのように振舞う教師がドアから離れていく。きっちり鍵を閉めて。この時代に廊下とは恐れ入った。
頭も冷えて目も覚める荒療治。果たして死にそうになったら助けてくれるだろうか。
「あぅ〜。」
隣には変な声で泣いている(鳴いている?)親友一人。
「そうだよなぁ。授業中だもんなぁ。」
いささか自分の状況把握能力に自信を失い、額に手を添え、ため息をついた。
「ごめんなさい・・・。」
と、いたずらをして怒られた子供のように夏樹は俯いている。拳を強く握り締めてプルプルと震えている。寒いからではない。きっと自分を責めているのだろう。
「だから気にしないで。さっきも言ったけど、元はといえば私が居眠りしてたのが原因なんだから、ナツは何にも悪くないんだよ。」
作品名:DESTINY BREAKER 一章 2 作家名:翡翠翠