DESTINY BREAKER 一章 2
彼女には起こす義務なんてありはしないのに、ただ、のんきに寝ていただけの私を救おうとしてくれたのであって、謝られるとこちらが申し訳ない。すると、彼女は満面の笑みを浮かべ、
「そうやって優しくしてくれるから桜花ちゃん大好き。」
と桜花の首に、何の前触れもなく腕を絡めるように抱きついた。桜花も、今回は完全に虚を突かれてのことだったので慣れているとはいえ驚いた。
彼女の名は草薙(くさなぎ)夏樹(なつき)(通称ナツ)。中学生のころからの付き合いで唯一無二の親友である。普段はおっとりとしたとてもおとなしい子で、外見は一言で言ってしまえば『ちっちゃくてかわいい』タイプの女の子である。中学生のころから変わらない少し外に向けてはねる癖のある髪を肩に届くくらいに切りそろえたショートカットと一般的な平均値と比べて発育の少ない身長と体型のせいで周りの人から高校生になった今でも中学生か運が(?)悪ければ小学校の高学年(最近の子は発育が良くてというのは言い訳だが)とよく勘違いされていて、本人はそのことをとても気にしている。ただ、二重で色素の薄い黒目の大きな瞳と高くはないが形の良い鼻や潤いのある薄い唇が『ただのかわいい女の子』から『とてもかわいい女の子』にステータスレベルを上げている。おそらく学校中を探してもここまで『かわいい』というイメージがピッタリと合う子はいないだろう。現に男子からの人気は安定して高いし、何故か一部の層からは絶大なる支持を受けているそうだ。(ファンクラブらしき存在もあるとかないとか・・・)
そのくせ成績は優秀で、県下一の進学校とまで呼称される(自分が通っていて自慢するわけではないが)県立霧ノ宮高校において、確か一年前の入学式では総代をつとめていた記憶がある(そのとき私は寝ていたのでよくは覚えていないのだが・・・)。普段はのほほんとしていて『勉強?ううん…人並みだよ!』なんて言っているくせに、人間とはわからないものだ。
ちなみに動物に喩えるなら『猫』しかないと思う。
小さくて気まぐれ、潤んだ上目遣い。
そういえばこの感情が昂ると突拍子もない行動に出るのも昔から変わっていない。
こういう癖さえなければ夏樹は完璧なのになぁ。
「ちょっ!もうナツ離しなさいって。」
「やだも〜ん。」
作品名:DESTINY BREAKER 一章 2 作家名:翡翠翠