ひとつだけやりのこしたこと
【かをりへのメール 2011年4月15日 1時24分】
昼にかをりさんにメールしたあと、さとみにメールした。
わたしはさとみを愛し続ける。さとみがほかのひとを愛しても。
さとみにとってわたしが「友達」でもわたしにとってさとみはいまでも「恋人」だから。
もしさとみが帰ってくるなら喜んで受け入れる。さとみと暮らしたい。
いま、さとみに電話した。
さとみは、「そんなの、わたし、ずるくない?」って言うから、「うん。ほかの人がそうしているのを見たらそう思う。でも、さとみだったら、思わない。だって、それより、嬉しい方が先だし。」
「わかった、そのときはそうする。でも、その間、つださんはほかの人と楽しんでいて。」
「・・・ないとおもうけど。それに、それを聞いたさとみが帰ってこなくなっちゃうし。さとみはマイフレとのメールとか、ほんのちょっとのことでも嫉妬したじゃない。」
「ごめん。もう絶対嫉妬しない。約束する。つださんがそっちの人をわたしより好きになった場合はあきらめるけど、そのときつださんがわたしを一番好きだったらやり直すよ。だって、今日のメール見て、ほんとに嬉しかったんだよ。昨日はずっと泣いていたの。こんなふうに言ってくれるのは絶対つださん以外にいない。」
ねえ、かをりさん。
わたし、変だと思う?
恋人をほかの男にとられようとしているのに何やってんの!とか、思う?
でも、わたしは電話のあと、とても気持ちが落ち着いて胸があたたかいよ。
昨日だったらこんなことは言えなかった。
かをりさんに気持ちを吐き出せたことで、憎しみや恨みの方にいかなくてすんだ。
哀しみや辛さがなくなったわけじゃない、それはある。
でも「その原因はあなたのひどい仕打ちでしょ。」とさとみを責める気持ちがほとんどないの。すこしあるかもしれないけど、それが主じゃないの。
わたし、さとみが帰ってくるのを、待つ。
嫌われたわけじゃないし。
絶対帰ってこない、となったら待つのをやめるけど、それまでは。
それに6月には、会えるし。「友達」だからセックスできないのかも知れないけど。
でも、友達だって、セックスすることだって、あるか。
作品名:ひとつだけやりのこしたこと 作家名:つだみつぐ