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つだみつぐ
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novelistID. 35940
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ひとつだけやりのこしたこと

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翌日の電話でさとみは最初から泣いていた。
泣きじゃくりながらひどく聞き取りにくい声で、「決められないよ。」と言った。
その後の話も、聞き取りにくいし、言っていることが矛盾してたり、わけがわからない。
「ケンちゃんと2度と会えないんじゃなくって、友達としてつきあえばいいでしょ。」
「恋人になってくれ、って、言ってるんだよ。」
「友達ならいい、それでだめならお別れします、って、言えば?」
「ケンちゃんに悪いよ。ケンちゃんが悲しむよ。」


さとみ。
いまなんて言った?いまなんて言った?
まだケンちゃんはなんにも傷ついていない、わたしの方は十分傷ついている、それなのにさとみはケンちゃんが悲しむことを気にしているの?それがわたしを悲しませることはどうでもいいの?

なんで?

わたしは悲しみで何も言えなかった。

そうなのか。それほどなのか。それほど夢中なのか。ほかのことは見えないのか。

ああ、わたしたちもそうだったね。あのころ、きちがいみたいにメールをしたね。完全に舞い上がっていて、ほかのことはどうでもよくなっていたね。

さとみは、いま、恋をしている。もう、始まっている。あのときのように。

そんなことは信じたくない。

決められない、というさとみにようやく、わたしは言った。
「いま、決められないなら、いつなら決められるの?」
「・・・・半年後ぐらい。」
「・・・・半年?」
「あ、3ヶ月ぐらいでも。」

明日続きを話すことにしてわたしは電話を切った。

半年?
この人は何を考えているのだろう。

半年この状態が続いたらわたしは気が狂う。おそらく一ヶ月でも。

さとみがひどく遠い。知らない人みたいだ。

さとみ、お願い、わたしをこれ以上苦しめないで。