ひとつだけやりのこしたこと
2009年02月02日 23時34分
たとえばわたしがさとみに「愛されたい」と考えたとするよね、でも、よーく考えるとわたしは「さとみに愛される」ことは原理的に不可能だよね、それはさとみがすることであって、わたしがすることじゃないから、せいぜいわたしにできるのは、「こんな男がさとみは好きなんじゃないかな」と想像して、その想像の中での、「さとみの好きな男性像」に自分を合わせようとすることぐらいだよね。でも、その想像は確実ではない、そうすると、いつもさとみの反応をうかがいながら、おどおどと生きていないといけないよね。
だけど、さとみを愛することなら、できる。さとみのしあわせ、さとみの悦びを願い続け、さとみを傷つけることをしなければいい。
さとみに、つださんに愛されることは、できない。できるのはつださんを愛すること。
さとみにお願いがあるの。
さとみ。つださんに愛されようとしないで。つださんの好きな女性像に自分を合わせようとしないで。自分自身を生きて。
そして
つださんを愛して。
それだけで、すべては、大丈夫だよ。だってつださんはさとみを愛し続けるから。どんな場合でも。
何の不安もなくて、愛する悦びと愛される悦びに浸り続けていられるから。
ずっと先のいつか、相手に先立たれることがあっても、悲しみにうちひしがれていてもさえ、「でも、わたしはちゃんとあなたを愛したし、あなたはちゃんとわたしを愛してくれた。わたしたちは、本当に、奇跡のように、しあわせだった。だから、わたしは一人でもちゃんと生きていけるよ。」って。
作品名:ひとつだけやりのこしたこと 作家名:つだみつぐ