小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

痛いよ

INDEX|4ページ/5ページ|

次のページ前のページ
 


昔好きだった高校の時の友達が結婚すると聞いて
少なからずショックを受けていた。
友達以上ではあったが恋愛にはならなかった初恋。
彼は俺の気持ちを知っていた。俺も彼が友達以上の愛情を持ち合わせていないのを知っていた。
ただ優しかったから俺に付き合っていただけだった。
もてあましていた心と体の熱を放出するために俺は彼の優しさに付け込んで、彼は俺を利用した。
一過性の熱がずっと続いていて、そのはけ口を探してお互いを利用していたのだ。それだけのことだった。
その関係も高校を卒業すると同時に終わった。
彼は地元で進学して俺は東京に出てきたのだ。

そんな彼から連絡が来たのは一昨日のこと。
出張でこっちに出てくるから会おうと連絡が入った。その時、改めて結婚すると告げられた。
既に知っていた事だったから本人から聞かされても特にこれといった思いはなかった。
良かったなと思うくらいだ。
「おめでとう」そう言った俺の言葉に彼は苦笑いを浮かべた。
「ほんとにそう思ってる?」
「思ってるよ。最初聞いたときはショックだったけどな」
「ショックだったの?」
「ショックだよ。だって俺達、そんな歳になったんだなぁって思うだろ」
改めて恋人との歳の差を考えてしまう。
同い年なら考えもしないんだろうけど、自分だけが急速に年取っていくようで。

「何だよ。何考えてんの?彼氏のこと?」
「ちがっ、そんなんじゃないよ」
図星を指されて赤くなった俺になおも絡んできた。
「彼氏じゃなかったら俺のこと考えてたの?思い出してた?昔のこと」
肩を引き寄せられ下顎を掴むとキスする勢いで彼の方へと向かされた。
「……馬鹿なこと言ってんなよ」顎にかかった手を払いのける。
「馬鹿なことじゃないよ。最近なぁ思い出すんだよ。あん時のこと」
まるで夢見るように話すけど、俺にとっては思い出の一部でしかない。
今考えるといい思い出になったのかもよく分からない。
「俺さぁ、やっぱりお前のこと好きだったんだよね」肩に回された腕に力が込められた。
「……止めろよ、冗談だろ?お前、酔っ払ってるんだろ?」
体を捩って抜け出そうとするけどより一層力が入って抜けなくなる。
仕方なく笑うしかない。本気じゃないだろ?
「いや、結構冷静。なぁ、やり直せないか?」
やり直す?やり直すって何だよ?俺達は恋人だったのか?そんな関係でもなかったろ。
何をやり直すって言うのか?やり直すものなんて何にもなかったじゃないか。
「帰るわ。式には出れないけど幸せにな」
強引に腕を振り払って1万円を置くと店を後にした。
あいつが何か言ってたけどもう何も聞きたくなかった。

作品名:痛いよ 作家名:haruya