CHARLIE'S 23
「今の横道は行ったことがあるのか?」
「ううん。昼間でも真っ暗だから・・・・」
「そうか・・・」
「パパ!あそこよ。あの右の階段を上がるの!」
カチャカチャカチャ・・・・出口が見えた。
どうやら公園の整備に使う道具庫のようだ。ラムがドアを鼻先で押すと「キィィ・・・」と小さく鳴いてドアが開いた。
チャーリーJr.は辺りを見回した。
見慣れた風景だ。南北に長い公園のちょうど真ん中、75丁目辺りだろう。
小さな小屋が見えた。灯りが灯っている。
「パパ。あそこよ。あのおうちがジョジさんのおうち。寄っていこうよ」
「本当に大丈夫なのか?その、ジョジっていう人間・・・」
「パパ。娘を信じて!」
娘を信じて!と言われては断れない。チャーリーJr.は小気味良く走るラムとルイスの後を追った。
小屋が近づいた。チラリと人影が窺える。
ラムは鼻先で小屋のドアを開けた。
「ミウさん・・・こんばんわ!」
「あら、まぁ!・・・こんな夜更けに、二匹揃って、どうしたの?・・・あら?後ろの方は?・・・ひょっとして、チャーリーパパ?」
「うん!私たちのパパよ。今日は偵察に行くの!」
「偵察?・・・外は寒いわよ、とにかく入って」
どうやら人影と映ったのは、このミウおばさんというバーニーズだったようだ。ラムが言うように優しいおばさま・・・だ。
「ミウさん・・・ジョジさんとゴンさんは?」
「ジョジさんはゴンを連れてお買い物に行っているの。私はお留守番よ。でも、偵察って・・・いったい、何処へ行こうとしているの?」
「パパ・・・・」
「うん。俺から話そう・・・」
チャーリーJr.は、今このニューヨークで起きている悲劇をありのままに話した。
先ほど見た保健所の青い車。檻に入れられて運ばれて行く犬たちの悲痛な叫び声が、脳裏に焼きついて離れない。
「そうだったのね・・・最近、この公園も夜になると物騒な犬たちがうろついているのよ。そういう事だったのね・・・パパさん・・・これからどうなるのかしら?」
「今、考えている所です。でも、まずは現状を見ようと思って・・・これからウエスト・サイドまで行ってきます」
「ウェスト・サイズ?・・・・見ての通り、大型犬だから結構ありますわよ・・・うふふ」
「ハハ・・・ウエスト・サイド・・・ですよ。アッパー・ウエスト・サイド。捨て犬たちが集まっているらしい・・・」
「あら、やだ・・・ホホ・・・ごめんなさい」
ふと、ドアを引っかくような音がした。
作品名:CHARLIE'S 23 作家名:つゆかわはじめ