CHARLIE'S 23
ホワイトハウスの桜が蕾をつけた頃、32代アメリカ合衆国大統領のフランクリン・デラーノ・ルーズベルトは、妻のアナとハーレムの墓地に来ていた。
フランクは、遂に頂点へ上り詰めたのだ。
在任中はホワイトハウスの中にあるレジデンスで暮らさなければならない。
ニューヨークとは暫しの別れである。
この時期には珍しく、空は晴れ渡り、日中の気温は、春の陽気を感じる程に上昇した。
とは言っても、此処はニューヨークだ。
寒い事には変わりは無かった。
フランクは三匹のビーグル犬を連れていた。
チャーリーJr,ルイス、そしてラム。
チャーリー達はルーズベルト家の飼い犬に戻った。
フランクとアナは共にニューヨーク生まれだ。日本的に言えば「墓参り」にやって来た。
来月、3月4日に大統領に就任する。
そうなれば好きなハンティングも中々行けなくなる。
生まれ故郷、ニューヨークへの里帰りすらできないだろう。
「アナ・・・暫くは、此処ともサヨナラだな」
「そうね・・・でも、戻って来ましょうね・・・」
「勿論さ。引退したらロックランド郡に家を建てよう。自然が一杯で素晴らしいと思わないかい?」
「素敵だわ〜楽しみは取っておきましょうね」
「愛しているよ・・・アナ」
「私の方が、もっと愛しているわ、フランク」
二人は手を取ると抱き合って唇を重ねた。
チャーリー達はリードを付けられている為、大人しくオスワリをしている。ふと、子犬の鳴くような声がした。
「ん?・・・あなた・・・聞こえた?」
「何が?」
「あっ・・・また鳴いたわ・・・子犬の様な声・・・」
「こんな冬空の下に子犬なんか・・・・」
作品名:CHARLIE'S 23 作家名:つゆかわはじめ