CHARLIE'S 23
先頭に立っているのは、グレイハウンドのペスカトーレ。威嚇はお手の物だ。
犬達は大通りを縦横無尽に走り回る。当然、発砲など出来ない。州警察は最も原始的な方法で犬たちを追い払おうとした。
人間は予測不可能な事が起きた時、突拍子も無い行動に出るようだ。
事もあろうに・・・走って犬を追いかけた。
州警察はペスカトーレの術中に嵌った。
日頃から厳しい訓練を受けているSP(シークレット・サービス)達は、一瞬、色めきだった。
反射的にホルスターから拳銃を抜いた。
だが、相手が犬だと判ると肩を竦めた。流石に犬は追わない。
道が空いた。
その直後だった。
T型フォードがタイヤを軋ませながらホテルに向かってきた。
蛇行運転。
SP達は再びホルスターから銃を抜いた。だが、首を傾げる。
蛇行運転するT型フォードに人が乗っていない。
無人の自動車が暴走しているのだ。
その不思議な自動車を見た者は慄いた。
「な、なんだ!・・・ゴースト・カーか!?」
記者が放った、たった一言が皆を怯えさせた。
「ゴ・・・ゴースト・カーだ!・・・幽霊が自動車を運転しているぞ!」
恐怖が伝染していく。ホテルの前から報道陣が勢い良く引いていった。
無人のT型フォードはアストリアホテルの前を猛スピードで通り過ぎた。
すると急ハンドルを切って、大きく左に旋回した。
タイヤを軋ませながら、後輪がスライドする。まるでスケートリンクを走っているようだ。
ほぼ180度旋回したT型フォードのノーズが取材陣に向けられ、停車した。
「と・・・止まったぞ」
一帯は水を打ったように・・・シン・・・と静まり返った。
作品名:CHARLIE'S 23 作家名:つゆかわはじめ