CHARLIE'S 23
二人はロビーへ降りた。
もちろんSPを含め、取り巻きが多数いる。
「表が賑やかだな」
「合衆国大統領が来るんだ。当然だよ」
「警備の方は抜かりないな」
「あらゆるハプニングを想定して警備体制を組んでいる。抜かりはないよ」
「ハプニングというのは予測が出来ないからハプニングだぞ」
「確かに・・・君の言うとおりだが、SP、州警察、特別警察、総動員させているよ」
「まあ、ジャックが言うのだから安心しているよ」
「心配ないよ・・・・」
実はこの時、ニューヨーク市の異変が報告されていた。
ジャックはアストリアホテル以外にも、マンハッタン全域を州警察(NYPD)にパトロールさせていた。
そのパトロール隊から、犬の姿を異常に見かけるとの報告が入っていたのだ。
ジャックはニューヨーク州以外でも、そのような事例が起きている事を聞いていた。
フランクは部類の犬好きだ。その影響もあり、ジャックも自宅には3匹のアフガン・ハウンドを飼っている。ニューヨークの捨て犬事情はジャックも心を痛めるところだったが、今、起きようとしているハプニングを予測・・・いや妄想すら出来なかった。
ホテルの前に特別仕様のリムジンが滑り込んできた。
一斉にストロボが焚かれて、辺り一帯が真昼のような明るさになる。
全米にネットワークを持つラジオ放送局、ARCのアナウンサーがその状況を、マイクを握り締めて大げさに伝えていた。
リムジンの中央のドアがSPの手によって開けられた。
ハーバート・フーバー。アメリカ合衆国大統領。
フーバーはルーズベルトが州知事になったこの3月に、大統領に就任した。
ストロボの煌きが更に増した。
ルーズベルト州知事達は、ホテルの正面玄関に整列してフーバーを笑顔で迎え、
硬い握手を交わす。
その時、異変が起きた。
パーク・アヴェニューに数百匹の犬が乱入してきたのだ。
作品名:CHARLIE'S 23 作家名:つゆかわはじめ