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つゆかわはじめ
つゆかわはじめ
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CHARLIE'S 23

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第15章・青い車の狂気

一番街、イーストリバーの畔にコクラモータースはあった。
ベッちゃんの住処である。オーナーの名は、ナンシー・フォスター。女だてらに毎日をオイル塗れになって働いていた。

自動車が富裕層に普及し始めて出来た、創業間もない整備工場だ。
アメリカは急速な自動車の普及に整備工場が追いつかないのが実情だった。

コクラモータースは犬の手も借りたい程の繁盛振りで、実際にベッちゃんも工具を運んだりして手伝っていた。
工場の奥にシートを被せたT形フォードがある。
水冷直列4気筒。3ベアリング式、サイドバルブで排気量は2,896cc。20馬力を出す。最高速度は時速70キロ超。
20馬力、最高速度70キロと言えば・・・何それ?と思われるかも知れないが、当時としては世界最高の技術で成し遂げたパワーと速度だった。
T型フォードはナンシーの私物である。ベッちゃんは、夜な夜なその私物にこっそりと改造を加えていた。

「こんにちは、ルチアーノさん。もう少しで整備は終わります」
「ああ、俺の愛車だ。シッカリと整備してくれ。金は幾らでも出すからな」

ラッキー・ルチアーノ。
言わずと知れた、暗黒街のボス。ルチアーノは大の車好きだった。余程の事でもなければ、車は自分で運転する。その辺の下手な整備士よりも自動車の構造には詳しかった。そんなルチアーノが信頼して整備を任せていたのがナンシーだった。

「ナンシー・・・うちの犬たちを知らないか?さっきまで庭先に居たんだがな」
「ペスカトーレですか?」
「ああ・・・他にも二匹連れて来た」
「きっとその辺で遊んでいるんですよ。今日は天気も良いし・・・」
「そうだな・・・整備が終わるまでには戻ってくるだろう」

青い車が一番街を北上していた。
犬たちから見れば、死神が運転する魔の自動車。
運悪く捕獲され、檻に入れられたら数日後には黒い煙となって天へ登っていく。
作品名:CHARLIE'S 23 作家名:つゆかわはじめ