CHARLIE'S 23
第6章・ダウンタウン物語
ニューヨーク、ダウンタウン。
ブロードウェイとキャナルストリートが交差するビル街はラッキー・ルチアーのお膝元。
後にリトル・イタリーと呼ばれるようになるイタリア移民の居住区だ。つまり、マフィア犬のボス、ペスカトーレの縄張りでもある。
ニューヨーク、マンハッタンの捨て犬はここダウンタウンでも数を増していた。
チャーリーJr.の目に、悲しい光景が飛び込んだ。
倒された円筒形のブリキ缶からゴミが散乱していた。
捨て犬がブリキのゴミ箱を漁っている。
頭を缶の中に突っ込み、僅かばかりの食料を得ようとしていた。
荒んだ生活で揺らすことの無い尻尾は力なく垂れ下がり、その先が冷たく濡れた道路に触れて、泥水を吸い上げる。
カシャ、カシャ・・・と、爪がブリキ缶を引っかく音が路地に響いていた。
ビルの影からその光景を見つめていたチャーリーJr.の心は痛んだ。
早くこの場を去った方が良い・・・そう忠告しようとした・・・先を越された。
3匹のブルドッグがゴミ箱を囲んでしまった。マフィア犬である。
同じ犬種だから体格は然程変わらない。
その中でも胴回りの一番大きいブルドッグが、生きる糧を必死に探している尻尾に喰らいついた。
当然、シッポの持ち主は驚愕の余り飛び上がり、ゴミ箱の中でバンバンと暴れた。
ブルドックは尻尾を咥えたまま引きずり出した。引き出されたミックスは悲痛な表情で許しを請う。
「こらぁ!・・・ここを何処だと思ってやがる!・・・ラッキー・ルチアーノ様の飼い犬、ペスカトーレ様の縄張りだと知っててゴミを漁っているのかぁ!」
「あわわ・・・すみません・・・腹が減って・・・もう、3日も食べてなくて・・・」
「だったらよ〜。ハドソン川の水でも飲んどきな〜体に石を括って放り込んでやるからよ〜。腹一杯、飲めるぜ」
「ひっ!・・・どうか・・・命だけはお助けを」
「ダメだね〜ここには掟ってものがあるんだ〜諦めるんだな・・・雑種」
「あわわ・・・どうか・・・どうか・・・」
「けっ!・・・おい!簀巻きにしてハドソン川に放り込め」
作品名:CHARLIE'S 23 作家名:つゆかわはじめ