CHARLIE'S 23
デュークとは馴染みなのだろう。抱きついて挨拶を交わしている。
デュークは女性の頬にキスをした。白人の目に留まったら大変だ。だが、二人はそんな事を気にする様子も無く、暫く談笑していた。
開いたドアから二匹の飼い犬が出てきた。
「あらあら・・・モモコにココ、だめよ。車が来るから危ないわ・・・ほら、中に入りなさい」
モモコとココは素直に店内に入っていった。
入り際にモモコが振り向いた。チャーリーJr.と視線が合うと可愛らしい声で吠えた。
「キャン!」
「どうしたの?モモコちゃん?」
「ハハ・・・チャーリーJr.に気づいたな」
「キャン」
「ああ・・・あの子ね・・・2年前からお世話をしているビーグルでしょう?」
「そうだよ、アイリス・・・息子と娘も一緒さ。ルイスとラムって言うんだ」
「名前はデュークが付けたのね」
「いや・・・首輪にシルバーのプレートが付けてあってね・・・刻印されていたのさ」
「まぁ、シルバーのプレート?・・・余程のお金持ちかしら?なかなかの面構えね・・・ハンサムだわ・・・いけない!お話に夢中になっちゃって・・・ロースト・ビーフね・・・直ぐに用意するわ」
「ああ、頼むよ・・・アイリスのロースト・ビーフはニューヨーク一だからね」
「サンキュー、デューク!・・・待ってて!」
アイリスは嬉しそうにステップを踏みながら店内に消えた。
閉められたガラスのドア越しに、モモコとココが車を見つめている。丸い目を小刻みに動かしながら鼻をヒクヒクさせていた。
デュークはアイリスから包みを受け取ると、代金を多めに払った。
アイリスからお礼の投げキッスを受け取ると、隣の花屋で薔薇の花束を作ってもらい車に乗り込んだ。ミシッ!という音と共に、車体が沈んだ。
オンボロ・フォードは再びガラガラガラ・・・というエンジン音を響かせながらパーク・アヴェニューを南下して行った。
オフ・ブロードウェイ。
それは通りの名前ではなく、小さな劇場を指す。
作品名:CHARLIE'S 23 作家名:つゆかわはじめ