CHARLIE'S 23
表に古びたフォードが停まっている。
デュークが後部ドアを開けると、チャーリーJr.は飛び乗り、シートに伏せた。
デュークはドアを閉めて、助手席に乗り込んだ。
運転手はデュークの弟子のチュチ・マトス。勿論、アフリカ系アメリカンだが当時は差別用語で呼ばれていた。
「ホントにお前は賢いな・・・チュチ・・・やってくれ。オフ・・・ブロードウェイ」
チュチは軽く返事をするとアクセルを踏んだ。
中古のフォードは、今にもバラバラになりそうに車体を震わしながら走り出した。
デュークは、数年後にロールス・ロイスを10台も持つほどに成功を収めるが、今のところはオンボロ・フォードで満足していた。オンボロでも車を持てるだけ凄い事なのだ。
ハーレムを出たオンボロ・フォードは、パーク・アヴェニューを一路南下した。
チャーリーJr.は窓から見える景色を眺めていた。街並みが後方へ面白いように飛んでいく。
パーク・アヴェニュー、65丁目は大きな交差点になっている。レストランが立ち並んでいた。
「そうだ、チュチ・・・あの店の前で停めてくれ。お土産にロースト・ビーフを買っていこう・・・あの店だ・・・」
「アイリス?」
「そうだ、レストラン・アイリスの前で止めてくれ」
「OK」
オンボロ・フォードは65丁目を渡りきると右に寄って停まった。停車すると、エンジンのアイドリングで、一層振動が激しく感じられる。
ガラン、ガラン、ガラガラガラ・・・・ガラン、ガラガラ・・・・・。
デュークは後方から車が来ていない事を確かめると、ドアを開けて降りた。
一瞬、車が浮いた。
「待っていてくれ」
デュークが店のウィンドウをコンコンと叩くと笑顔の白人女性が現れた。
作品名:CHARLIE'S 23 作家名:つゆかわはじめ