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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「夢の中へ」 第二話

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主は藤次郎たちの会話を聞いて感心し、まどかに違う着物を奥から出してきて勧めた。柄の入った美しい着物であった。

「こちらになされるが宜しかろう。代金はそなた様の美しさと、藤次郎様の優しいお心で払っていただきましょうぞ、ハハハ・・・いやあ、いい商売を久しぶりにしたわ」

「ご亭主どの・・・一生このご恩は忘れません」

「若いのに関心じゃのう・・・ひょっとしてご兄弟ではなく、思い逢っているお二人なのかな?」

「いえ、そのような関係では・・・ございません」

「隠さずとも良いぞ。とてもお似合いに感じられるがのう・・・」

まどかは藤次郎のことを好きになっていた。このとき店の主人にそう言われてはっきりと自分の中に藤次郎が兄ではなく、好きな人として映っていた。

帰り道真新しい着物を羽織ったまどかは誰もが振り向く美しさだった。しかし、この時代風呂に入らないから顔や身体が水で拭くだけでは汚れが綺麗に取れないで付いていた。もし鏡を見ていたら、とても人前に出られるような顔をしていないと感じた事だろう。

「なあ、まどか。湯に入りたいだろう?」

「ええ、しばらく入っていないから出来れば入りたい」

「この先の庄屋さんの家でコメをこのしし肉と交換してもらうついでに湯を無心する事にしよう。俺に任せておけ」

「大丈夫なの?」

「ああ、時々そうしているからな」

庄屋の主人は顔なじみのようだった。それもそのはずだ。桶狭間の決戦のときに親と離れて彷徨っていた藤次郎を今の納屋に匿ったのは他でもない主だったのだ。