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二人の王女(4)

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「それが、あの声の云う窮地だったのかしら」
「アスカが、一体誰の声を聞いてここへやってきたのかはわからぬ。女王が二人もいるという話さえ、聞いたことがないのだ。そなたは、我々にとって未知の存在だ」
 あすか自身にさえ、自分が置かれた状況を把握できてはいなかった。ただ、夢だと信じているので、それらの事態にでさえ楽観的であった。
「アスカが住んでいた世界は、どのような世界なのだ?こことはだいぶ違うようだ」
「全然違うわ。大きなビルが立ち並んで、みんな同じ制服を来て学校に通って、刺激のない世界よ」
「ガッコウ?」
「あ、勉強するところよ。数学とか、歴史とか、四十人くらいが一クラスになって、教師を前にして知識を学ぶの」
「騎士の訓練隊のようなものか。剣術や馬術を学ぶのか?」
「そういうのは教えてくれないわ。馬なんて乗らないし、戦う必要もないし」
「戦わずして、どうして国を守る?」
「…戦争をしてる国もあるけど、あたしの国は平和よ。勉強して、会社に入って、経済活動をするだけ」
 アークは、腑に落ちない顔をして、「戦わなずして成り立つ国とは、余程強い国なのだろうな」と真面目な顔をして云った。
「ねぇ、そのなんとかって花がある洞窟までは、遠いの?」
「ラズリーだ」
 アークは正して、云った。
「エルグランセの洞窟までの距離自体は、さほど遠くはない。しかし、一番近い道を行こうと思えば、隣国の領土を侵さねばならない。それは、極めて危険だ。だから、我々は遠回りにはなるが、人の領土ではない道を選んでいる。この森を抜け、その先の谷を行く」
「隣国の領土って、そんなに危険なの?精霊の方が、ずっと厄介な気がするけれど」
 あすかは、あの精霊らを思って云った。
「精霊たちは、起さねばさほど危険なものではない。隣国の領土に踏み入れれば、我らが国を出ていることが明らかとなってしまう。それは、国の非常事態を相手に報せるようなものだ。そうなれば、隣国はここぞとばかりに我が国に攻撃を仕掛けるだろう」
「入ったことがバレなきゃいいんじゃないの?」
「それは無理だ」
 アークは険しい面持ちで答えた。
「どの国にも、占術師らによって防御術が国全体に掛けられている。一足踏み入れてしまえば、異物の侵入を相手に報せてしまう」
「…とても、神経質なのね」
作品名:二人の王女(4) 作家名:紅月一花