「夢の中へ」 第一話
「そうか・・・お前も一人ぼっちなんだな。心配するな。俺が居るから・・・」
「うん・・・」
「おまえ幾つだ?」
「十五」
「そうか、もう嫁に行っても遅くないな」
「嫁に行く?まだ早いよ、ぜんぜん」
「ぜんぜん?ってどういう意味だ?」
「お嫁に行くってまだまだ早いっていう意味」
「そうか?十五だろう。みんな嫁に行く歳だと思うけどなあ」
「藤次郎さんは幾つなの?」
「俺か?十八だ。老けて見えるか?」
「ほんと!三つしか変わらないの・・・信じられない。ご両親とか兄弟とかはどうしたの?」
「いねえよ、そんなもん・・・」
「初めから?」
「聞きたいのか?」
「話さなくてもいいよ・・・ゴメン」
「すまない・・・初めて会ったのに知っている訳ないよな。言うよ」
「ありがとう」
「殺されたんだ。信長の奴らに・・・皆殺しにされた。もう十年も前になるけど」
「信長?誰その人?」
「知らないのか?美濃の織田信長だよ」
藤次郎の口から出た言葉はまどかを震撼させた。もし本当であればいま自分がいる場所と時代がハッキリとするからだ。
作品名:「夢の中へ」 第一話 作家名:てっしゅう