「夢の中へ」 第一話
「気が付いたか・・・良く眠っていたぞ」
「ここはどこですか?」
「知らないのか?見ろ、あそこの仙人塚の前で倒れていたから、助けたんだぞ」
「仙人塚の前で?」
確かにそこには仙人塚があった。しかし周りに住宅も道路もそしてコンビニも見当たらなかった。何度も何度も周りを見た。
「どうした?何も覚えてないのか?」
「私の着ていた服はどうしたんですか?」
「何を言っているんだ。その格好で倒れていたんじゃないか」
「何がなんだか解らない・・・あなたは誰?」
「それを言うなら自分から名乗りな。どこから来て何をしていたんだ?」
「わたしは柳田まどか、ここの近くに住んでいるの」
「柳田?そんな姓は聞いたことがないぞ。それにここらへんはおれ以外には住んでいないしな。見れば解るだろう、周りは森だぞ」
「そんな・・・あの仙人塚の前で甲冑を着た武将の方と会っていたの。そしたら急に連れ去られたような感じで気を失って・・・目が覚めたらここに居たの」
「ふ~ん、武将に連れ去られたって・・・今までここに住んで武将なんてみたことがないぞ。お前は不思議なことを言うやつだなあ」
「信じてもらえないのですか?」
「信じろって言う方が無理だろう。俺はそこの小屋で生活をしている藤次郎っていうんだ。覚えておいてくれよ。一人暮らしだから気を遣わなくていいぞ。自分を思い出すまで居ろよ。変なことはしないから」
まどかは何がどうなっているのか解らなかった。携帯も家に置いてきたから連絡が取れない。じっとその場で藤次郎を見て立っていた。
作品名:「夢の中へ」 第一話 作家名:てっしゅう