あなたとロマンス
僕は海まで続く広い砂丘の端っこにシートをひろげた。
ここだけが松の木の陰になるのだ。日差しを避ける唯一の特等席だった。
「いいところね~」
「いいだろ」
「そうやって何回も連れ込んでるのね」
「言い方に棘があるな~」僕は笑った。
「陽子、今日は君の為にランチを作ってきた」
「へぇ~、うれしい・・・その口説き方も?」
「馬鹿、お前が初めてだ」
「信じる・・・」
僕はワイングラスを取り出し、用意した彼女の為のランチを手早く広げた。
そしてワインを彼女のグラスに注いだ。
「乾杯」
「は~い、乾杯」陽子は微笑み僕の顔を見ながら一口飲んだ。
「なんだよ、じろじろ見るなよ」
「へぇ~、まめなんだね」
「別に・・・気が向いただけだから」
「よかった気が向いてくれて。私初めてかな、こんなの」
「・・・・」
「ちょっと、うれしい」
「ちょっとかよ」
それから僕達はランチをつまみにワインを飲んだ。
5月の海は穏やかだった。
日本列島の長い海岸線のほんの一部分にいる僕達は点のようなもので、大きな海からすれば流れ着いた貝殻のような存在だ。
僕は白い雲が広がる空を見る為シートに仰向けに寝転がった。
木漏れ日から見える太陽が時折眩しい。
彼女は鼻歌を歌いながら海を見ていた。
「なあ、陽子。俺たち今からどうなるのかな」
「・・・さあ、なるようにしかならないし、嫌いになったら別れるし、好きだったらこのままだし」
「このままがいいな・・」
「そう?」陽子は立ち上がり、寝ている僕の頭のそばに立った。空に逆光で微笑む彼女が現れた。
「陽子、スカートを持ち上げてくれないか」
「えっち・・」
彼女はスカートの生地をつまみ、膝まで持ち上げた。
白い足が頭上に三角形に伸び、陽子の小さな膝が見えた。
「もっと・・」
「えっち」また同じセリフを陽子は言った。
今度は下着が見えるほど足を露わにした。風が余ったスカートの生地を揺らす。
「陽子・・いやらしいな・・」
「好きでしょ・・」
「ああ、大好きだ。ずっとこのままがいいな」
「ずっとこのままは無理よ。永遠なんてないわ」
「そうだな、よく知ってるな」
「もう婆ぁになる大人だもん・・」
僕達は海の匂いを含んだ風に吹かれて、お互い笑った。
永遠なんか信じない。今この時のリアルが大事。
僕は両手を差し伸ばして彼女を求めた。
彼女の顔がゆっくり近づき、僕達は上下逆さまのキスをした。。。。
Love again....