あなたとロマンス
交通規制を縫うようにして彼女のマンションに車で向かう。
約束の時間に彼女は玄関に出ていた。
彼女にしては珍しくロングのスカートをはいていた。
「おはよう」
大人のはずなのに少女のような声を出す。顔には笑顔が溢れていた。
すぐさま車に乗り込んできた。
街を抜け出すと少しずつ晴れ間が見えてきた。
「どこいくの?」陽子が聞いてくる。
「誰も来ない秘密の場所」
「そこって元カノと行った事あるとこでしょ」
「・・するどいな」
「まあ、いいわ。ドライブなんて久しぶり。風が気持ちいいね」
僕は録音したAnnett Louisan をBGMに選ぶ。ドイツ語だった。
幹線道路から左折して海風を遮る防風林が続く道をしばらく走ると、松林の切れ間に車一台が通るかどうかの狭い道が現れやがて広い場所に出た。
「着いたよ。降りよう」
「こんなとこ?」
僕は後部座席からバスケットとシートを抱え、そして彼女に先立って細い松林の小道を歩いた。
100m程歩くと松林が開ける。最後の丘を越えると目の前に大きな海が見えた。
「すご~い。広~い。きれい」
「気にいった?」