あなたとロマンス
バーは割合混んでいた。彼女は先にカウンターで待っていた。
僕は約束の時間に少しばかり遅刻した。
「遅い!」
「ごめん、ごめん」
「誕生日は忘れる、約束は遅れる、最低ね・・」
「そんなにむくれるなよ」
「だって最近ずっと会ってなかったんだよ。うれしくないの?」
「うれしいよ」
「態度で表してよ」
「こうか・・・」
と言って僕は立ち上がり彼女を後ろから抱きしめた。
「恥ずかしいからやめてよ」彼女は僕を払いのけた。
「そうかハグがダメなら・・・待ってな・・」
僕はカウンターの端に飾ってある花瓶の花を携帯で写真を撮り、バーテンダーに近くのコンビニがどこにあるか聞いた。
「ちょっと待っててくれる3分」
僕は彼女にそう言い残し、ホテルの前のコンビニに急いだ。
先程写した綺麗な花びらの写真を、コンビニのコピー機でプリントした。
ネット通信ですぐさま今はプリントできるのだ。
僕は彼女が待つカウンターに持ち帰り、とりあえず一杯目のジントニックを注文した。
「何をする気?」
「恩返し・・いや、僕の嬉しい気持ちの表現」
A3用紙にいっぱいに広がった花びらは鮮やかに紙の上で咲いていた。
僕はその用紙を折り紙の要領で折り込み始めた。平面的な花の写真が立体的になっていく。
ジントニックが運ばれてきた。それを一杯飲み、また続ける。
小学校の頃覚えていた「花束の折り紙」だ。
あの頃は小さな色紙で折っていたが、花びらの写真で折っていくと、雰囲気のいい素敵な紙の花束に仕上がった。
「はい、これ」僕は彼女に差し出した。
「きゃぁ~、やるわね~。どこで覚えたの?」
「小学校で」
「小学校でこんな女の口説き方を教えるんだ?」
彼女は笑いながら受け取った。やっと上機嫌になったようだ。
僕達は改めて乾杯した。