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大国主 みこと
大国主 みこと
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世界に挑む平成建国政権  第1章

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 電話が切れる。山城は脅迫に屈する屈辱を感じるが事実関係の調査は必要と決意した。

 大屋市長私邸、中西と大屋市長が深夜の応接室に対座する。応接机に置かれたコーヒーを飲む市長が中西にも勧める。中西も一口飲み用件を切り出す。
「ご承知の様に国民の賛否郵送を受取り、集計を望む団体が悉く陰湿な妨害を受け、警察までもがそれに加担している。市長は民意を非常に大切にされ公務員は民意に中立たれ、と主張し行動する姿に感服する。その市長に助けて欲しいとお願いはしない。ただ市域で活動を望む団体に少し目を閉じて頂きたい」中西は切々と訴える。
「おっしゃる主旨はよ~く判る。私も頑強に抵抗する既得権者達と日々の如く戦争しているから。ただ私も国民、気に入らない点を一言云いたいが」
「どうぞ、望むところです」
「まず州たる地方総督、知事と市町村長との間に行政的断層を感じる。県域で実行したい民生について市町村の合意形成は誰に権限があるのか? 民生だよ民生」
「あそれね。総督は藩主、知事は家老、市町村長は家老に所属する侍大将と思って頂くと理解し易い。但し家老は県の利益代表でなく藩主の補佐役です。藩は自給自足の国策を遂行するが、藩主、家老は民生の市町村合意形成に一定の権限を持つ。私らは自衛隊育ち、命令系統は一本で筋を通す。縦割り行政は公開した通り所管の一本化を実行する」
 中西は市長の顔色を伺いながら、
「それで総督、知事の公募は不満ですか?」
「わけの判らん無能な知事を金と利権で選ぶよりまし。ただ公募の方法次第だね」
「決定の最終段階は市町村長も参加できる公開討論になる。納得できる水準の能力者を決める。但し総理の選定は国民、総督の選定は総理、知事の選定は総督とし一本筋にする」
 市長は中西の説明を整理しているらく、腕組みし次の問いに移る。
「次に市区町村に権限と財源の移譲を唱えているが、財源はどうなります?」
「固定資産税と住民人頭割、諸手数料は市区町村の固有財源。市区町村域の法人関連税、個人関連税は国税庁が一括徴収し、一定比率を市区町村の自由裁量権つきで配分する。地方域のたばこ税と酒税の全額を市区町村の格差是正に確保し、配分は総督と知事の権限に委ねる。総務省は地方域の格差是正に数兆円規模の財源を確保し地方域に配分する。他は使途の自由度までは未定ですが地方交付金です」市長はがっかりした様子で、
「たばこ税2兆と酒税1兆5千億では都道府県が使うと市町村配分は夢の夢」
「いやいや、たばこ税と酒税は丸ごと市区町村へ配分するひもなし財源です。都道府県は戦略予算で国策を遂行し、県税の類は一切なくし徴税を集約し徴税コストを低減します」
「藩主、家老は侍大将に人事権行使できないが予算配分権で従わせる、ですな、マ今まで随分と国に騙され、ぼったくられましたゎ」市長は笑い何となく納得した様子を示す。
「どうです。願いは聞いて貰えますか?」中西は確認する。市長は考え込み、
「う~ん、マァ貴方達は明智光秀みたいなもんだからねぇ」
「これはしたり、云うに事欠き明智光秀とは。我々は戦後日本の方向を決めた吉田茂だ」
 市長と中西は大笑いする。市長は中西より幾分年長だが同世代の気安さでうちとけた。
「で、賛否受付、集計を望む団体の心当りは?」
「ああ大有り、マスコミが最適ですが日和見でして。電波と通信の国務府直轄は電子政府の推進が目的と説明しても、マスコミはベタな勘繰り言論統制が頭をよぎるらしい。市長にだけ打明けるが、公共の電波使用を正すため、国民への公開情報番組を義務化したい」
「私の番組出演もクダランのですかねぇ」市長は皮肉っぽく尋ねる。
「いやいや、あれは市長の考えを発表する情報公開と受止めます。立派な事です。横道に逸れましたが、市長を応援する勝手連の旗上げ予定をご存知ですか?」
「いや、そんなのは一向に」市長は首を傾げる。
「そうですか、未だ旗揚げ前ですから。極く普通のおっちゃん、おばちゃんの団体です。実はこの団体をお借りして、国を変えるゾ勝手連、と名前を換えて貰いました」
「ほぉーそれで?」市長は身を乗り出し、耳を傾ける。
「恐らく大量の葉書が郵送される。その賛否を数える広い場所が欲しい。廃校を長くても3ヶ月間だけ不法占拠したい。市長は表向き強制退去を口にしながら引伸ばして欲しい」
 中西は市長の耳元に口を近づけ、希望の廃校を囁く。
「エェッ、あそこは民間の任意団体が利用しているよ」市長は驚き首を横に振る。
「市長の暗黙の了解が得られると勝手連が話をつけます。が万一、その団体が市長へ直訴したときは、そのビッグマウスで上手く捌いて下さい」
「ビッグマウスねぇ」市長と中西は又も大笑いする。市長は極めて厳しい顔し、
「ウチの所属代議士の安全は確保してくれますか?」
「我々は戦友の言葉通り流血を望まない。早期収拾には国民の速やかな判断がいる」
「判りました。市長の権限と法律の許す範囲で」
 市長と中西は晴れやかに握手して別れる。

 議事堂・御休所前、香山が御休所に屯する隊員3名を窓越しに見つける。香山は走って御休所の扉を開き、
「おい、天皇陛下の部屋に入るな!!」隊員達は敬礼もせず横柄な態度をとる。
「成功するのか!? 少しぐらい・・・」一等陸士が反抗的に応える。
「お前達、根を上げるにはまだ早いぞ」
「上官づらすな!!」二等陸士が香山を睨んで反抗する。
「何!!」香山は二等陸士にサッと近づき胸倉を掴む。二等陸士が振り解き殴りかかる。
 香山と二等陸士が殴り合いする。一等陸士と別の二等陸士が2人を引き離し、夫々が香山と二等陸士を羽交い絞めにする。銃撃の音が聞える。緊張する隊員達。
「行くぞ!!」香山と隊員達が駈出す。

 議事堂・正門前敷地内、議員が正門へ向って駆ける。正門入口の柱から隊員が威嚇射撃する。議員が走る足下の横を銃弾痕が地面を削る。
「進むと射殺する、戻れ!!」衛視の服装する隊員が怒鳴る。
 敷地外の正門ゲートの壁際から狙撃体勢をとる即応隊員。
「狙撃するな。撃つな、撃つな」即応隊員の後方から拡声器の声が飛ぶ。即応隊員が無念そうに狙撃体勢を解く。議員が両手を上げて引返す。

 衆議院議長室、香山と中隊長3名が集り、小テーブルを囲んで座る。香山が頭を下げ、
「申し訳ない、私の隊が真っ先に規律を乱した」
「不安と疲れだ。穏便な処置を」第5中隊長が取り成して云う。
「隊員3名、脱出議員と両隣の議員は一昼夜の監禁と食事抜きにする」
「豚太りの脱出議員にはよいダイエットかも」
 香山は反対意見がないのを待ち、
「次に明るいニュースがある。やっと大阪と名古屋に賛否を集計する団体が現れた。中西隊の活動が端緒についた。近く賛否数を発表するとの事だ」
 香山の言葉に中隊長達が頷く。
「まだ半月だ、先は長い」第2中隊長が楽観を戒める。

 中央郵便局前、男2人が大きな袋を夫々担ぎ郵便局より出てくる。歩道を歩き始める。後から白いバンが男達に近づく。バンが停まり降りた4人の男が、担いで歩く男達の袋を奪う。袋を奪った男達はバンに乗込み逃走する。その間1分である。約20m後方を歩くNWHの轟記者は映画の一シーンを見る如く目撃する。奪われた男の一人が携帯する。