私の隣のあなた
「最近、パソコンに熱心だね」
「そうかなー。あなただって帰ってくるとパソコンしてる。今、何だか面白いの」
「楽しそうな君を見ているのは嬉しいよ」
どちらからともなく、キスをした。柔らかな唇の感触がとても新鮮に感じた。何度も重ねた。
「じゃあ、少し仕事するから」
そう言って、あなたは、部屋へと入っていった。
私もパソコンを立ち上げ、あの作家の作品を読んだ。そのうえ初めてその作品にコメントを書いた。
――素敵なお話でした。きっと想う人はわかっていると思います――
翌日、私の入れたコメントに返事があった。
――読んでいただきありがとう。その人がいつも居てくれるだけでいいんです――
見ず知らずの人と言葉が繋がったことに 不思議に感動した。
ふと、見るとその作家が新作を書いていた。私はすぐに読み始める。
(あれ?何だろう、この文章……)
どうしても、書かれた情景が、昨日のわたしとあなたのさまに似ている。世間でも同じような出来事はあるんだとほのぼのと読み返した。
(どんな作家さんなのかな?そうだプロフィール)
少し手馴れてきた操作でボタンを切り替えながら作家の情報を見た。ハンドルネームらしき名前。情報には男性で生年月日が書かれてあった。あなたに酷似したその情報に(まさか)の三文字が浮かぶ。私は、メッセージを送ることにした。返事は三十分ほどあとに届いた。
疑う気持ちがなくなった。あなただよねと思える言葉が連なる。私はひとりで画面に微笑み、きっと頬を染めているだろう。こんな風にあなたに会えるなんて、一度きりでない出逢いに感動と感謝をした。運命かもしれないと思わずにはいられなかった。
あなたに確認なんて勿体無くてできない。聞いてしまったらそこで終わってしまうのは避けられない。
これは本当に私だけの秘密。言葉を選ばなくてはいけない。私とわかってしまわないように身の回りも気をつけなければいけないと、自分を戒める。心がわくわくどきどき愉しんでいる。あなたへの想いが強くなる気がした。