私の隣のあなた
それから、私はその作家とのやりとりを楽しんだ。あなたが直接囁いてくれない言葉がそこにはあった。
あなたのことを知り尽くしているような気になっていた私だったが、その作家と語る時間は、また違うあなたを見つける。
熱く唇や身体を重ねても、あなたが見えなかった不安をそれは僅かに解消してくれる。
ぶっきら棒なのかシャイなのか、表面だけしか見せないあなたを少し知る。
私のことをどう思っているのだろう?その想いを知りたくて……。
作品に隠された私への思いを コメントで確かめる。
卑怯なやり方だと思う。後悔する時がくるかもしれない。
でも、あなたのことが好きでたまらない私は仮面を被ったままあなたに近づく。
あなたは、ネットの中で恋をしているの?
あなたの隣にいる私じゃない私に恋しているの?
私は、嫉妬すればいいの?それとも幸せを溢れさせればいいの?
嬉しい反面、切なく哀しい気持ちを胸の中に秘めてあなたの言葉に恋してる。
そっと……目の前の私を愛して欲しい。
そして
そっと……ネットのあなたに別れを告げる。
― 了 ―