そんな二人で手を繋ごう
1.そんな人もいたんです
心の何処かで、あの時間を綺麗な夢として置いておきたいと思ってたのかも知れない。
甘い、甘い夢の中。彼の腕の中がただ暖かかった、そんな時間を。
俺は自他共に認める面倒臭がりである。
正直時々マジで息するのがめんどいなぁ、と思うことがあるくらいに。
いやごめんちょっと誇張し過ぎた。別に死にたいわけじゃないんだよ。ただ俺は平々凡々とのんびりおっとり過ごしていたいわけだ。
それを侵されると、ちょっともう消えたいなぁと思うことがあるだけで。
思えばあいつと出会ってから、そんなことを思う回数が爆発的に増えた気がする。
いや気がするじゃなくて増えた。確実に増えた。
前までは一ヶ月に2回ぐらいだったのが一日3回ぐらいになった。マジ大爆発じゃねぇか。
今考えるとなんであいつだったんだろうと思う。
平々凡々を愛する俺は、当然それを愛するに相応しい姿形なわけで。
まぁ、可もなく不可もなくな容姿と頭と身体能力の持ち主である。
名前は圭介。うん、どこにでもいそうだな。うちの学年にも後3人ぐらい同じ名前の奴がいたはずだ。漢字は違うけど。
だけど、一つだけ普通とは言えないものを持ってる。いや、持っていたというべきか。
俺には、あいつ……3つ年上の「彼氏」がいた。
「……あー、うん。そっか。まぁ、いいんじゃない?別にそんなの個人の自由だし。俺が口挟むことじゃないしな」
「うん。お前ならそう言うと思った」
じゃなきゃ言わないよ、こんなこと。
俺は弁当をつつきながら誰彼構わずこんなに軽くぶっちゃけ話が出来るほど空気の読めない人間ではない。
話のきっかけは些細な事だった。
俺が前にいた学校が男子校だったという話題から、男子校での彼女の作り方に話が移り。
でもまぁお前はいなかったろうと笑われたので少しムッとしてこう言った。「彼氏ならいた」と。
「3つ年上かぁ。大学生?」
「いや、大学には行ってなかったっぽい。詳しく聞いたことないからわかんないけど」
学校には行ってない、とだけ聞いたことがある。人伝にだが。
ただ在籍はしてるけどサボってるという意味での行ってないなのかも知れないし、そこの所は俺にもよくわからなかった。
ふと目の前でパンを千切っては口に入れていた勇樹の顔が、何故か怪訝なものになっていることに気付いて首をかしげる。
「えー、なんかもーお前全然変わってねぇのなー」
勇樹はわざとらしくはぁとため息までつきながら呆れたように言った。
「小学校の時もそうだったよな。他人の事に無関心っていうかさー」
そう言いながら勇樹は2つめのパンを開いた。
手元にはあと2つ菓子パンが残っている。
そう言えば小学生の頃は、俺が給食当番だった時に必ず「ちょっと多めに入れてよ」なんてねだってきてたなぁこいつ。昔っからよく食う奴だったわそういや。
それが高じてか、今のこいつの身長は俺の頭一つ分でかい。
その上顔も悪くない。つまりモテる。さっさと滅びてしまえばいいのに。
「ちょ!お前親友に向かって酷っ!!」
おっと心で呪ったつもりが声に出ていたらしい。
まぁ別に確信犯だからいいけど。
俺はなんか喚いてる勇樹を無視して話を続けた。
「別に無関心って訳じゃないって」
でも当人が言わないことを根掘り葉堀りこっちから聞くってのも、なぁ?
気にならない訳じゃないんだ。ただこう、聞いていいものかどうなのか迷った場合は聞かないようにしてるだけであって。
ほら、見ざる聞かざる言わざるって言うじゃん?
俺はあれ中々的を得てると思うわけよ。
だがそう説明すると必ず言われることがある。
「でも恋人のことじゃん」
……ほら、ね。これだよ。
俺はうんざりとした顔を隠しもせずに勇樹を見た。
「何その顔」
勇樹は俺の顔を見て心底ワケわからんというように肩を竦めた。
「なにさー。好きな奴のこと知りたいって当たり前のことじゃねー?」
「……まぁ、普通の相手ならそうなんだろうな」
でも残念ながら、俺の恋人様はそんなことホイホイ訊けるような相手じゃなかった。
今思えば、本当に恋人同士と呼んでいい関係だったのかなぁとすら、思ったりなんかして。
「もう過ぎたことだけどな」
そう、過ぎたことだ。
俺逹の関係が実際問題どうだったかなんて、今考えてももうどうしようもないことで。
(1年だ……。あれからもう1年、経ってんだぞ)
もう昔のことだと俺は笑った。
勇樹には、下手くそな笑い方だと馬鹿にされたけど。
心の何処かで、あの時間を綺麗な夢として置いておきたいと思ってたのかも知れない。
甘い、甘い夢の中。彼の腕の中がただ暖かかった、そんな時間を。
俺は自他共に認める面倒臭がりである。
正直時々マジで息するのがめんどいなぁ、と思うことがあるくらいに。
いやごめんちょっと誇張し過ぎた。別に死にたいわけじゃないんだよ。ただ俺は平々凡々とのんびりおっとり過ごしていたいわけだ。
それを侵されると、ちょっともう消えたいなぁと思うことがあるだけで。
思えばあいつと出会ってから、そんなことを思う回数が爆発的に増えた気がする。
いや気がするじゃなくて増えた。確実に増えた。
前までは一ヶ月に2回ぐらいだったのが一日3回ぐらいになった。マジ大爆発じゃねぇか。
今考えるとなんであいつだったんだろうと思う。
平々凡々を愛する俺は、当然それを愛するに相応しい姿形なわけで。
まぁ、可もなく不可もなくな容姿と頭と身体能力の持ち主である。
名前は圭介。うん、どこにでもいそうだな。うちの学年にも後3人ぐらい同じ名前の奴がいたはずだ。漢字は違うけど。
だけど、一つだけ普通とは言えないものを持ってる。いや、持っていたというべきか。
俺には、あいつ……3つ年上の「彼氏」がいた。
「……あー、うん。そっか。まぁ、いいんじゃない?別にそんなの個人の自由だし。俺が口挟むことじゃないしな」
「うん。お前ならそう言うと思った」
じゃなきゃ言わないよ、こんなこと。
俺は弁当をつつきながら誰彼構わずこんなに軽くぶっちゃけ話が出来るほど空気の読めない人間ではない。
話のきっかけは些細な事だった。
俺が前にいた学校が男子校だったという話題から、男子校での彼女の作り方に話が移り。
でもまぁお前はいなかったろうと笑われたので少しムッとしてこう言った。「彼氏ならいた」と。
「3つ年上かぁ。大学生?」
「いや、大学には行ってなかったっぽい。詳しく聞いたことないからわかんないけど」
学校には行ってない、とだけ聞いたことがある。人伝にだが。
ただ在籍はしてるけどサボってるという意味での行ってないなのかも知れないし、そこの所は俺にもよくわからなかった。
ふと目の前でパンを千切っては口に入れていた勇樹の顔が、何故か怪訝なものになっていることに気付いて首をかしげる。
「えー、なんかもーお前全然変わってねぇのなー」
勇樹はわざとらしくはぁとため息までつきながら呆れたように言った。
「小学校の時もそうだったよな。他人の事に無関心っていうかさー」
そう言いながら勇樹は2つめのパンを開いた。
手元にはあと2つ菓子パンが残っている。
そう言えば小学生の頃は、俺が給食当番だった時に必ず「ちょっと多めに入れてよ」なんてねだってきてたなぁこいつ。昔っからよく食う奴だったわそういや。
それが高じてか、今のこいつの身長は俺の頭一つ分でかい。
その上顔も悪くない。つまりモテる。さっさと滅びてしまえばいいのに。
「ちょ!お前親友に向かって酷っ!!」
おっと心で呪ったつもりが声に出ていたらしい。
まぁ別に確信犯だからいいけど。
俺はなんか喚いてる勇樹を無視して話を続けた。
「別に無関心って訳じゃないって」
でも当人が言わないことを根掘り葉堀りこっちから聞くってのも、なぁ?
気にならない訳じゃないんだ。ただこう、聞いていいものかどうなのか迷った場合は聞かないようにしてるだけであって。
ほら、見ざる聞かざる言わざるって言うじゃん?
俺はあれ中々的を得てると思うわけよ。
だがそう説明すると必ず言われることがある。
「でも恋人のことじゃん」
……ほら、ね。これだよ。
俺はうんざりとした顔を隠しもせずに勇樹を見た。
「何その顔」
勇樹は俺の顔を見て心底ワケわからんというように肩を竦めた。
「なにさー。好きな奴のこと知りたいって当たり前のことじゃねー?」
「……まぁ、普通の相手ならそうなんだろうな」
でも残念ながら、俺の恋人様はそんなことホイホイ訊けるような相手じゃなかった。
今思えば、本当に恋人同士と呼んでいい関係だったのかなぁとすら、思ったりなんかして。
「もう過ぎたことだけどな」
そう、過ぎたことだ。
俺逹の関係が実際問題どうだったかなんて、今考えてももうどうしようもないことで。
(1年だ……。あれからもう1年、経ってんだぞ)
もう昔のことだと俺は笑った。
勇樹には、下手くそな笑い方だと馬鹿にされたけど。
作品名:そんな二人で手を繋ごう 作家名:ポウ