魔法使いミカちゃん
お母さんは、台所の棚から何かを取り出し、ミカちゃんに渡しました。
「じゃーん。ミカに魔法のノートをあげよう」
「魔法のノート? おえかきちょうだよ」
「違うわよ。ほら、ここに金色の星がついているでしょ。ここにパワーがあるのよ」
お母さんは、何度も失敗しながら 金色の折り紙を星型に切り、貼っておきました。
「このノートに書くと忘れないのよ」
「持ち物は、連絡帳に書くんだよ」
「連絡帳に書いて、これにも書くの。だって これは、魔法のノートだからね」
翌日、ミカちゃんは、家に帰ってくると 書いてきたことを 何度も見ていました。
お母さんは、ミカちゃんが眠ってから、こっそり見ました。
ノートに書かれていたものが、ランドセルといっしょに置いてありました。
それから、ミカちゃんは、ノートを見ながら、持ち物を用意するようになりました。
でもある日、ミカちゃんが 遊びに夢中になってうっかり忘れていた時のことです。
お母さんは、ノートを見て こっそり用意しておきました。
朝、起きてきたミカちゃんが、目を丸くして言いました。
「おかあさん!あ、あ、おはよう。ねえ、おかあさん、すごいの。魔法みたい」
その気持ちの高ぶりには、お母さんも驚きました。
「ちゃんとあるんだよ。きのう 忘れていたのに 起きたらあったの。すごーい」
「そう。魔法がきいたのね」
「うん。魔法!すごいね、魔法!」
「ほらほら、遅刻する子は、 魔法が使えなくなりますよ」
「はーい」
ミカちゃんは、朝ごはんを食べ、仕度をして元気に学校へ出かけていきました。
それからは、お母さんが、ときどき用意することがありましたが、ミカちゃんの忘れ物は、なくなりました。