魔法使いミカちゃん
「そう。でも、どうして書かれたの?」
「給食当番のマスクを忘れたから、明日も忘れないようにって 書かれたの」
「ミカが、忘れ物したからなのね」
ミカちゃんは、うなずきました。
「桜井先生は、書くときに何かおっしゃった?」
「明日も忘れたら、当番できないよって。ここに書いておこうって」
「そっかぁ。桜井先生は、いけないね。だって、ミカに消し方を教えてくれなかったでしょ?」
ミカちゃんは、好きな桜井先生をかばうように お母さんのエプロンを引っ張りました。
「わたしが、忘れ物をしたから 書かれたんだもん」
おかあさんは、しゃがみ、ミカちゃんに話しました。
「忘れ物したのは、ミカがいけない。それに気付かなかったお母さんも ごめんなさい」
ミカちゃんは、おかあさんの話を聞きました。
「だけどね。ミカが こんなに手が真っ赤になるくらいこすっても消えないのは困る。消し方を 教えてくれなかった先生もいけない」
お母さんは、にっこりほほえむと 自分の部屋からマニキュアの除光液とコットンを持って ミカちゃんのところに戻って来ました。
ツーンと鼻にくる臭いに ミカちゃんは、思わず鼻をつまみました。
お母さんは、ミカちゃんの手のひらに書かれた文字を そっと消し始めました。
「あ、消えた!でも、忘れ物ばかりしちゃうから また書かれる……」
確かに、ミカちゃんは、小学校に行くようになってから何度となく忘れ物をしていました。
それでも お母さんは、「困ったね」と微笑むだけでした。
「どうしよう……」
「どうするの?」
お母さんは、ミカちゃんの気持ちが 動き始めたように思いました。