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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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緋色の追憶≪序章≫

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「なんてきれいな……」

 近づくにつれて、少年の容貌がはっきりと見えてきた。その美しい横顔にフォンテーネは息をのんだ。ふいに少年がフォンテーネの方を見た。

「あ」

 声を上げたのは同時だった。けれど、少年はすぐに跪いてフォンテーネに挨拶した。

「気がつかずに申し訳ございませんでした。姫様」

「あ、あの。ご、ごめんなさい。脅かしちゃって」

「いえ」

 少年は下を向いたまま小さくつぶやいた。

「あの、お願いがあるんだけど」

 フォンテーネは思い切って、少年に言った。

「その馬車に乗せて貰えないかしら」

 思いもよらない言葉に少年は驚いて顔を上げると、緑色の澄んだ瞳がフォンテーネをとらえた。少年はフォンテーネの美しさに、フォンテーネは少年の瞳に釘付けになり、二人はしばらく見つめ合った。

「い、いえ。とんでもございません。こんな馬車に姫様を乗せるなど……」

 我に返った少年は平身低頭して辞退するのだった。

「でも、わたし。急いで帰らないと」

 フォンテーネは懇願した。

「城までとは言わないわ。森の入り口まで。ね。お願い」