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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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緋色の追憶≪序章≫

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 門を入ってからもしばらくの間屋敷は見えてこなかった。広い庭は丁寧に造られており、幾種類もの花が咲き誇っている。いくらか心が落ち着くのを感じた。
そして、ようやく馬車は豪奢な屋敷の玄関で止まった。
「さあ、つきましたよ」
 冷たい目の年増女が言った。
 御者が扉を開ける。
「さ」
 女に促されて馬車から下りると、重い鉄の扉の前に立った。その威圧感に思わず息をのんだ。
「今日から、ここがあなた様のおうちですよ。どうぞ。フォンテーネさま」

 ──フォンテーネ?


  ……テーネ


      ……ンテーネ


 だれ? わたしを呼ぶのは……?

 
     フォンテーネ


 そうだわ。わたしはフォンテーネよ。


 どのくらい意識がなかったのか、目を覚ますと、知らない部屋だった。
 起きあがろうとすると、めまいがする。ユウコは顔だけを少し動かして、部屋の様子をうかがった。
 豪華な調度品が並べられている。校内にはもちろん、寄宿舎の応接間だって、こんなにりっぱではないはず……と、いぶかしんだ。
 しかし、ユウコの意識はまだはっきりとはしていなかった。
 気を失っている間、フラッシュバックのようにさまざまなシーンが浮かんできた。それらはまるで、自分が体験したかのようなリアルさで、脳裏にきざみこまれていたのだった。
 そのためか、ユウコは異常な倦怠感を感じていた。