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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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緋色の追憶≪序章≫

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 礼拝が済むと、食堂へ移動して朝食になる。ところが、その朝はちがった。
「このまま少しお話があります。みなさん、席はそのままに」
 学園の副院長が言うと、いったんは壇上からおりた院長が再びやってきた。
「静粛に」
 とまどい、ざわめく生徒たちを一瞥して、院長が張りのある上品な声で言うと、礼拝堂はたちまち水をうったように静かになった。
「とつぜんなのですが、この学校の経営者が変わることになりました」
 院長のこのことばに、生徒たちはふたたびざわめいた。
「この学校の経営って、そんなにひどかったの?」
 ユマがユウコにささやいた。
「そんなこと聞いてないわ」
 ユウコはユマに答えた。
「みなさん。お静かに」
 生徒たちの動揺をよそに、院長は落ち着いて言い続けた。
「学園の経営は順調です。けれど、このたびある方のたってのご希望で、経営をその方にゆだねることになったのです。もちろん、一切は今まで通りです。みなさんはなにも心配することはありません」
「よかったぁ」
 安堵の声が会場のそこここから漏れた。
「今朝は、その方がみなさんにご挨拶にみえたのです。ご紹介しましょう」
 院長が手を差しのばすと、その先から出てきた人影に一瞬光が輝いたように見え、ユウコは思わず目をしばたたかせた。
 けれど、生徒たちは思い思いに感嘆の声をあげていた。それほど、その人物は魅力にあふれ、誰の目も釘付けにしてやまなかったのだった。
「みなさん、静粛に!」
 副院長が甲高い声でざわめく生徒たちに注意する。しかし、彼女らの興奮はさめやらない。
「みなさん。はじめまして」
 壇上に上がったその人物が口を開き、透き通るような涼やかな声が響くと、生徒たちはすぐに静かになった。
 すらりとした長身の真っ白なスーツに身を包んだ青年だった。長いシルバーブロンドの髪をさらさらと肩に流し、その瞳は深く澄んだ湖のように青かった。
「あっ」
 その顔を見て、ユウコは小さな悲鳴をあげると、たちまち気を失ってしまった。