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最後の魔法使い 第七章 『覚悟』

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 たった一回しか読んでいないのに、不思議なくらい呪文を覚えていた。ジュダとディディーは驚きの表情でアレンを見つめていた。『フォール』は消えたが、それのおかげであたりの火はすっかり消え、すぐには火がつけらえないくらい湿っていた。ジュダの家も原形をとどめる程度は残っていた。アレンは一気に、最後の数行を唱えた。

「我ここに誓いを立て、この者に沈黙を与えん!」

 ジュダの家―正確にはジュダの家に使われているアシャールの木材―が、がたがたと震えだした。炭になってしまった部分もあったが、それはお構いなしに、アシャールの木の蔓が眼にもとまらぬ速さで四方八方に伸びた。魔法を使ったアレン以外、つまりその場にいる者すべてを捕まえるつもりらしい。ジュダとディディーも危なかったが、二人は慣れたもので、現代魔法で蔓を手なずけて(・・・・)しまった。さすがにウェズナー将軍は異変に気がつき、自分に迫ってきた蔓を燃やしてしまったが、ほかの兵士たちは迫る蔓に構える暇もなく、体を巻きあげられてしまった。足を取られて逆さづりになった兵士もいた。数秒後には、地に足が付いている兵士は一人もいなくなった。
「うわーーーーーっ!!!」
「た、助けてくれぇ!」
 兵士たちは苦しそうに叫び声をあげ、じたばたと抵抗しようとした。だが、木の蔓は手足もすっかり縛っていて、兵士たちは魔法を出そうにもうまくいかないようだった。それほど強く唱えたつもりはなかったのだが、思いのほか『沈黙の木』は強力だった。少しずつ、だが確実に、兵士たちの息を根絶やしにするつもりのようだ。
「馬鹿どもが!」将軍は吐き捨てるように言った。「まったく使い物にならん!」
今のうちだ!アレンはジュダとディディーに走るように合図をした。3人が茂みから顔を出したところで、アレンは将軍と眼があった。
「魔法使いィィ!!!!!!」
ウェズナー将軍は血相を変えて、アレンたちのいる方へ近づいてきた。
「ジュダさん、ディディー、早く走って!」アレンが叫んだ。
 将軍は怒り任せに、大きな火の玉をアレンたちのいる方へ放った。自分の部下を台無しにされた怒りというよりは、また魔法使いに出し抜かれたことに腹を立てているようだった。やばい!先に行ったジュダとディディーの後を追いかけるように、アレンは一目散に駆けだした。