キツネのお姫様
昔、あるところに一人の猟師がいました。
ある日のこと、猟師が大きな猪を担いで村の近くまで降りてきたところ、二匹のキツネがいました。どうやら親子のようです。
「これはツイてるわい」
親子のキツネは猟師に気が付いていないようでした。猟師は鉄砲でキツネを撃とうとします。
その時、ハッとしたように親のキツネが猟師を見ました。キツネには今から逃げても無駄なことはわかっていました。
「お願いです。どうか撃たないで下さい。母親の私が死ねば、この可愛い坊やが生きていけません。後生ですから見逃して下さい」
母親ギツネは猟師に頭を下げ、そうお願いするのでした。さすがにこれには猟師も可哀想になり、鉄砲を下げました。
「そうだな。今日はでっけぇ猪も捕れたことだし、いいだろう、見逃してやろう」
猟師がそう言うと、母親ギツネはニッコリ笑って言いました。
「お礼に何か一つ、好きな物に化けてあげましょう」
それを聞いた猟師は、頭に手を当てて考えました。
「そうだ。お前、襟巻きに化けられるか?」
「襟巻きですか?」
「ああ。キツネと言えば襟巻きだ。俺みたいな貧乏な猟師には無縁の物だが、何でも随分と温かいそうじゃねぇか。一度でいいから、その肌触りを確かめてみたいんだ」
母親ギツネはしばらく考えました。あまり襟巻きになった自分は想像したくはありません。でも少しの間なら、と思い化けることに決めました。
「いいでしょう。襟巻きに化けましょう」
そう言うと、母親ギツネからドロンと煙が上がりました。するとそこに一枚の襟巻きが落ちていたのです。子供のキツネは不思議そうな顔で見ています。
猟師はその襟巻きを拾うと、自分の首に巻きました。
「ほほう。こいつは温かくていいや。最高だ」
そこへ家来を連れたお城のお姫様の駕籠が通りかかりました。お姫様は月に一度、近くのお寺へお参りをするのです。
ところがこのお姫様は、とても欲が深く、わがままな性格でした。
お姫様が駕籠の扉を少し開けて、猟師を見ました。そして家来を呼びます。
「これ、わらわはあの襟巻きが欲しい。あの猟師に言って貰ってくるのじゃ」
それを聞いた家来はツカツカと猟師に歩み寄ります。
「お城のお姫様が、そなたの襟巻きをご所望じゃ。ほれ、これにて差し出せ」
ある日のこと、猟師が大きな猪を担いで村の近くまで降りてきたところ、二匹のキツネがいました。どうやら親子のようです。
「これはツイてるわい」
親子のキツネは猟師に気が付いていないようでした。猟師は鉄砲でキツネを撃とうとします。
その時、ハッとしたように親のキツネが猟師を見ました。キツネには今から逃げても無駄なことはわかっていました。
「お願いです。どうか撃たないで下さい。母親の私が死ねば、この可愛い坊やが生きていけません。後生ですから見逃して下さい」
母親ギツネは猟師に頭を下げ、そうお願いするのでした。さすがにこれには猟師も可哀想になり、鉄砲を下げました。
「そうだな。今日はでっけぇ猪も捕れたことだし、いいだろう、見逃してやろう」
猟師がそう言うと、母親ギツネはニッコリ笑って言いました。
「お礼に何か一つ、好きな物に化けてあげましょう」
それを聞いた猟師は、頭に手を当てて考えました。
「そうだ。お前、襟巻きに化けられるか?」
「襟巻きですか?」
「ああ。キツネと言えば襟巻きだ。俺みたいな貧乏な猟師には無縁の物だが、何でも随分と温かいそうじゃねぇか。一度でいいから、その肌触りを確かめてみたいんだ」
母親ギツネはしばらく考えました。あまり襟巻きになった自分は想像したくはありません。でも少しの間なら、と思い化けることに決めました。
「いいでしょう。襟巻きに化けましょう」
そう言うと、母親ギツネからドロンと煙が上がりました。するとそこに一枚の襟巻きが落ちていたのです。子供のキツネは不思議そうな顔で見ています。
猟師はその襟巻きを拾うと、自分の首に巻きました。
「ほほう。こいつは温かくていいや。最高だ」
そこへ家来を連れたお城のお姫様の駕籠が通りかかりました。お姫様は月に一度、近くのお寺へお参りをするのです。
ところがこのお姫様は、とても欲が深く、わがままな性格でした。
お姫様が駕籠の扉を少し開けて、猟師を見ました。そして家来を呼びます。
「これ、わらわはあの襟巻きが欲しい。あの猟師に言って貰ってくるのじゃ」
それを聞いた家来はツカツカと猟師に歩み寄ります。
「お城のお姫様が、そなたの襟巻きをご所望じゃ。ほれ、これにて差し出せ」