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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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無幻真天楼第二部・第三回・弐】坂田さん家のみつるくん

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「若が産まれて初めて若を見て…あれからもう13年とか…早いなぁ…よくこうやって寝かしつけたっけ」
一定のリズムが心地いい
大きくて優しい手
坂田がもぞっと動いて少し布団から顔を出した
「こっちに来るまでは時が流れるって感覚がわからなかった…」
「…歳…とらねぇの?」
「…それすらわかりません…気づいたら自分がいた…って感じです」
「母親とか…いねぇの?」
「言ったでしょう?坂田組のみんなが俺の家族なんですって」
柴田が笑う
「お前…さ」
「なんです?」
「母さんのこと好きだったろ」
布団にくるまったまま坂田が聞いた
「若?;」
少し間を開けて柴田が苦笑いを向ける
「見てりゃわかんだよバーカ」
「ちょ…若?;」
寝返りをうって坂田が柴田に背を向けた
「…見てりゃってことは若は俺を見ててくれていたってことですよね」
「ばっ…ちが…!!;」
「ありがとうございます若」
がばっと起き上がった坂田に柴田が言う
「かっ…勘違いすんなっ!!; 別に俺は…っ」
「若;病院病院」
坂田の肩に手をおいて柴田が坂田を宥める
「別に…俺…は…」

父親よりは母親に似ている自分
母親に似ていると言われるのは不思議と嫌ではなかった

「若?」
呼んでも返事をしない坂田
ため息をついた柴田がふと何かをひらめき坂田を見た
「深弦」
坂田の名前を呼んでみると驚いた坂田が顔をあげた
「あやっぱり若よりこっちの方がいいですか?」
「ん…な…っ;」
口をパクパクさせる坂田の顔がだんだんと赤くなっていく
「み…」
「だぁあっ!!;」

ぼふっ!!

柴田の顔面に枕が投げつけられた
「呼ぶな!! 言うなっ!!;」
「ひどいなぁ若;」
「帰れッ!!;」
ベッドの上に立った坂田が怒鳴る
「…確かに俺は昔姉さんが好きだったこともありました」
立ち上がった柴田
ベッドの上に立つ坂田と丁度同じくらいの目線で柴田が微笑むと
「っうわっ!!;」
坂田をひょいっと抱き上げた
「大きくなりましたね若」
「ちょ…何っ;」
坂田がジタバタと暴れる
「放せおろせバカッ!!;」
「若」
柴田がじっと坂田を見る
沈黙が続く
「なんだよ…」
「…おやすみなさい」
坂田をおろした柴田が窓に向かって歩き出した
「明日また来ますね」
振り返り笑った柴田がすうっと消える
さっきまで柴田が座っていたベッドにはまだぬくもりが残っていて
逆にそれが胸に痛くて
「泣き虫」
「うるせぇ」
ツツミに突っ込まれた坂田が鼻水をすすった