小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

無幻真天楼第二部・第三回・弐】坂田さん家のみつるくん

INDEX|4ページ/14ページ|

次のページ前のページ
 


柴田の車がバックで坂を下り遠ざかる
ちらっと京助が緊那羅を見た
「…また鼻水でてんぞ」
「あ…;」
ズッと緊那羅が鼻水をすする
「あー…腹へったーぁよっと」
京助が石段に足をかけると緊那羅も小走りで石段に足をかけた
「…ただいま」
「へ?」
「た だ い ま って」
「あ…お…おかえりだっちゃ」
「うむ」
石段を上りきった京助が少し後ろにいる緊那羅を振り返る
「お前もおかえり」
京助が言うと緊那羅が少し驚いた顔をしたあと
「ただいまだっちゃ」
嬉しそうに笑った

「遅ぇ」
「すいません若;」
ベッドに座り足を組んだ坂田が買い物袋を下げて部屋に入ってきた柴田をにらんだ
「色々買ったりしてたら…あ、何か飲みます?」
オーバーテーブルに袋をのせた柴田がガサガサと袋を漁る
「お茶と…」
袋の中身を取り出しテーブルに並べていく柴田
「それ」
「え?」
それ、と坂田が指差した物を柴田が見る
「コーヒー…ですか?」
「おう」
「でも若今コーヒー飲むと寝れなく…」
「うるせぇよこせ」
坂田が手を差し出すとため息をついた柴田がコーヒーを手渡した
「お前があんまりコーヒーばっか飲んで胃、壊さねぇように代わりに俺が飲んでやろう」
「はいはい…ありがとうございます」
苦笑いをした柴田が椅子に腰かけると坂田がベッドをポンポン叩いた
「…なんですか?」
柴田が聞き返すとベッドを叩く強さが増す
「若?」
「っ~; 隣ッ!! こいってんだっつーのッ!!」
坂田が声をあげた
「え?…あー…はい」
柴田が立ち上がり坂田の隣に座る
「なんですか?」
「別に…なんとなく」
足を組み直した坂田がコーヒー缶のタブを開けた
病室に広がるコーヒーの匂い
「なぁ柴田…お前さ…」
「なんですか?」
「…なんで…」
その言葉の後が続かず沈黙が続いた
「…どうしてここに来た…ですか?」
ちらっと柴田が坂田を見ると少しうつむいていた坂田
「どうして…か…俺は初め…竜を追ってきたんです」
「京助の親父さん?」
「そうです」
柴田が話し出した
「…竜がどうして上の考えと【時】を拒み歯向かうのかが知りたくて」
「わかったのか?」
「…若のおかげで」
「俺?」
にっこり笑った柴田をきょとんとした顔で坂田が見上げる
『消灯時間30分前となりました。御面会にいらした方は…』
院内に響いた放送は消灯時間30分前を伝える
「あ…もうそんな時間…明日また来ますね」
「あ…お う…」
坂田がまたうつむいた
「若、こいつおいていきます」
「へ?」
そういって差し出された柴田の手のひらに乗っていたのは10センチくらいのウサギの耳がついた小さな式神だった
「ツツミっていいます」
「…ツツミ…」
「んだ」
「…喋りやがった…」
坂田を見上げにかーっと笑ったツツミ
「話し相手に」
「…さんきゅ」
にっこり笑った柴田に坂田が小さくお礼を言った