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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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無幻真天楼第二部・第三回・弐】坂田さん家のみつるくん

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入ってきたのは着物姿に髪を結い上げ眼鏡をかけた坂田の母、みのり
「みっつ」
病室の戸を閉めて坂田に近づくと頭を撫でた
「頑張んだよ」
「…おう」
頭を撫でられながら坂田がちらっと柴田を見る
「母さんがついてるから!!」
「…おう」
「あーもう何でみっつがこんなことになんだろね…母さんが代われたら代わりたいわ…昨日怖くなかったかい?母さんもついていたかったんだけど柴田がやめろなんていうもんだから」
坂田を抱き締めて頬擦りしながら坂田母が言う
「姉さんはそろそろ子離れしないといけませんよ」
「うるさいねっ!! いいじゃないか!!可愛いんだもの!!」
坂田母が柴田に向かって吠えた
「母さん;」
坂田が呆れたように坂田母を少し押す
「俺は大丈夫だって」
「みっつ…偉いねぇ…母さん…っ」
眼鏡を外し着物の袖で目頭を押さえた坂田母に柴田がハンカチを差し出した
「若ももう13才ですよ? ね?」
柴田が坂田に笑顔を向けると坂田が昨日の事を思いだしバッと顔をそらした

柴田は母親が好きだった

ちらっと目を向けると柴田からハンカチを受け取った坂田母がそれを目に当てている
なんだか自分だけその場にいないような気がして坂田がうつむく
「みっつ?」
「…便所」
サンダルを履いた坂田が病室から廊下に出た

別に尿意があったわけではなく
ただあの場にいずらかっただけで
どんなに母親に似てるからといっても
自分は自分で母親は母親
髪を伸ばしても
眼鏡をかけても変わらない
そんな考えと手術に対する不安からか微かに震える指先を坂田がぎゅっと握った
点滴台を転がしながら歩く患者とすれ違い
車椅子を押す看護師とすれ違う
お見舞いに来たらしい人たちともすれ違った
開けたホールの手すりに寄りかかってうつむく坂田
気を抜くと今なら泣ける自信があった
「…弱っえ…」
ため息をついた坂田が手すりから離れて元来た廊下を戻り始める
「若」
廊下に少し響いた声に坂田が顔をあげた
「柴田…」
「なかなか戻ってこないから…」
小走りで坂田に近づく柴田
「…若?」
「み…ん…なっ…」
柴田の声と姿を見て一気に生まれた安心感から坂田の涙腺が緩んだ
それを隠そうと坂田が顔を隠しながら後退する
「くんな…」
嗚咽がまじった坂田の声に何か気づいたのか柴田が坂田の腕をつかんだ
「はな…」
ばさっと頭からかけられたのは柴田の上着
そして坂田の体がふわっと浮かぶ
「…重くなりましたね若…」
柴田の心臓の音が聞こえる
「顔見えませんから」
上着から伸びた坂田の腕が柴田のシャツを掴んだ