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やさしい犬の飼い方(仮)

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 ――……暑い……。何でこんなに暑いんだ、昨日何したっけ、ここどこだ?何で俺こんな――……!

 ガバっと勢いよく飛び起きたら隣でうーんと呻き声がした。視線をそちらに向けると、“それ”は気持ち良さそうな顔で眠っている。
 昨日のことは夢じゃなかったんだ、と改めて思った。いっそ夢ならよかった。見ず知らずの男を家に泊めるなんてどうかしてる。女の子だったら確実に食われちゃってるよ、俺。
 ……昨日の俺はどうかしていたんだ。寒かったし、雪とか降ってたし。そう自分に言い聞かせながらベッドから這い出てカーテンを開ける。眩しいほどの日の光が射し込んできた。三月らしい、いい天気だ。続けて時計に視線をやると、家を出なければいけない時間の30分前だった。大学までは徒歩10分だから、少し急いで支度をすれば間に合う。
「オイ、起きろ」
 ベッドで丸くなっている“それ”の肩を揺する。しかし再度唸り声をあげただけで一向に起きる気配がない。……どうするかな、これ。俺がいる時間ならまだしも昨日知り合ったばっかりの人間を家に残しておくのは些か心配だ。それに俺は元々、昨日泊めてやるだけのつもりだったんだ。今日は泊めてやるつもりなんかない。だって普通に考えてどうかしてるだろ、ペットとか拾うとか……つーか、そろそろ時間がない。俺は急いで着替えて教科書をキャリーケースに突っ込んで歯磨きをして、いざ家を出ようというところではたと思い付いた。
「オイ」
 言いながら“それ”の頭を小突くともぞもぞと身動ぎをする。
「スペアキー置いてくから、帰るときポストん中入れとけよ。じゃーな」
 きちんと聞いていたかどうかは定かではないが、とりあえずスペアキーをテーブルの上に置いて、俺は家を出た。

 大学への道を歩きながら、昨日、あれにハチと名前を付けたことを思い出した。赤ん坊でもあるまいし、名前まで付けるなんて本当に、どうかしている。