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DESTINY BREAKER 一章 1

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寝覚めの悪い夢に起こされたのだから自然と声のトーンは落ち、おもむろに窓から見える夜空にけだるそうに体を向けて外の風景を睨みつけるようにすると、ベッドのスプリングが体勢を変えたことで小さく弾み、腰まで届きそうなロングヘアーが隙間から漏れる風とベッドの振動によって僅かに揺れる。
立ち上がってガラス越しに見える景色はただひたすらに闇に染まり、曇りガラスでない窓は自らを映し出す鏡と似たものになる。窓が鏡となり、そこに映った色の薄い自分の顔は平常時より微かに苛立ちを表しているが、その苛立った表情には似合わない涙の通った跡がうっすらと浮かび上がっていた。
「私、また泣いてたんだ・・・。」
瞳から流れ落ちた雫は、もうその姿消してしまっているけれど通っていった足取りは月明かりに反射して細い一本道を映し出している。
また同じ。このような起き方をしたときには決まって私の顔に二本の道が出来ていた。私は切れ長の瞳の横に続く涙のあとをそっと指でなぞった。
そう、いつも同じ夢、同じ風景、同じ情景。
そして、同じ心。
何故だろう。いつからだったか、こんな夢をみるようになったのは。
いまの外のように深い闇に包まれた世界。
誰かに抱きかかえられている私。
闇に沈もうとする私に必死に声をかける誰か。
その景色を楽しそうに見ている誰か。
全ては思い出せない。ただ強い印象を残す場面だけが脳に焼き付いているだけだ。曖昧、本当はそうではないのかもしれない風景を自分の勝手な思い込みで解釈しているだけなのかもしれない。夢は本来不明瞭なものであって、霧という存在を認識していてもそれをまとめて捕まえることができないことの如く留めようとも漏れて消えてしまう。
記憶の片隅に夢の欠片が点在し、自分のみた夢のパズルを完成させるピースはどんなに探しても見つからないものだ。それは狭い空間でなくしたものではなく鬱蒼とした永遠に続く森の中に落としてきてしまったものだから。
それなのに、何故これだけははっきりと思い出せるのだろう。
とても悲しい目で私を見ていた二つの瞳だけを。
わたしも、そう・・・とても悲しかった。
「ほんとにどうしちゃったんだか。」
どこか悶々とする気持ちに苛立ちながら頭を振ると、溜め息混じりに窓から身を離し再びベットに横たわり読みかけの小説を片手に枕元にあるライトのスイッチを入れた。
作品名:DESTINY BREAKER 一章 1 作家名:翡翠翠