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DESTINY BREAKER 一章 1

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偶然性が、否そもそも前兆こそが偶然か、前兆という欠片が偶然的に現象という枠組みに合致してしまったに過ぎない。だから欠片の存在しない『現象』も在り得るし、それが存在することは否定することができない。朝に和食にするか洋食にするかで迷ったからといって、それが必ずしも人の死を決定することが無いのと同様である。

これもその『大概』というものから外れた一つといっていいケース

『起』を無視して突然現れたそれは私の前に立っていた。

それは私を見つめ微かに優しく微笑み、地面に倒れている私はただ呆然としてそれを見上げていた。

行動と心理と選択肢から導き出されることのない真理と現実を含んだ幻想のような出来事。
前兆を無視して起こり得る突発的出来事(アクシデント)
『大概』とは相容れることのないコレを人はときに『運命』と呼称するのだろう。



紅と黒の世界。二つの色に支配された大地と天空。
月をも霞む漆黒のなか紅く染まった大地は、失われし生命の光を映し出す。
さながら朧月。見え隠れする有様は常世の光景に自らの無力さを痛感し目を覆う童のように小さきもので、常夜の世界を照らすことができないほど瑣末な存在。


黒い黒き空の下。紅い紅き地の上で。いま一時(いっとき)の夢を見る。
霞み消え行く玉響(たまゆら)は生まれ出でくる命となりて、ただ紡がれたる時を待つ



「頼む!目を開けてくれっ!頼む、お願いだ・・・。」
遠くから悲しみにかすれた声が聞こえてくる。暗い、どこまでも暗い漆黒の世界からうっすらと小さな光が差し込む方角へ目を開くと大好きな彼の顔が見えたので嬉しくて手を伸ばす。
『・・・泣かないで』
口が自然と言葉を紡ぎだす。
体には思うように力が入らず伸ばした手が重力に引かれ下がっていく、自分の腕なのに重く感じる、しかしその手が力強い彼の手に絡められ胸元に引き寄せられた。温かく大きな手、出会ってから何も変わらない、その優しい感触。
トクン、トクン、トクン。
体を通して聞こえる音。
私は彼の鼓動を感じていた。
「○○○!」
私の好きな声が名前を呼んでくれていて、それだけで幸せを感じる。
でも、薄く霞んでいて、うまく視覚できない彼の表情が悲しさで歪んでいることがわかると私も寂しい気持ちになる。切なく、胸が締め付けられる。
作品名:DESTINY BREAKER 一章 1 作家名:翡翠翠