飛行機雲の人
それから課題も終わり学校を出て、今日もまた待ち合わせのファミレスへと向かった。
俺は彼女と二人で軽食を食べた。昼どきを過ぎたファミレスは客も少し減って過ごしやすい。
食事をし、二人で他愛のない話をして笑いあう。たまにふたつの瞳を見つめあわせる。それだけで十分だった。
俺は幸せのなかに浮かんでいた。
可愛い彼女。繊細な白い肌、食事をするためにすらりとしたその指が動くのを見つめる。
彼女は俺を見て微笑んだ。綺麗な笑顔に見とれる…。やわらかく、まぶしい光。彼女は白だ。
光は儚くて、美しいから恋焦がれるんだ。手を伸ばして、伸ばして…。
安らぎをこの心へ満たしたいと願う。
ふと、窓の外が目に入る。
空は相変わらず何ひとつ変わらない。なにもない。ひとりだ。
そのまま、俺の目はどこか遠くを見やる。自分のくだらない空想の渦だ。どこにもないなにか。
…そして、彼女の目はそんな俺をはっきりと映していた。
このときの俺は、彼女の目が寂しい微光をたたえていることに気付くことができなかった。
このときだけじゃない。俺は彼女の目を、きっと、ずっと知らなかったんだ。
すべては不安定な幻。俺が、彼女が、空が、雲が、夏が、海が、…?
青い色が深く冷たく。こわくて。
この目は、眩しい白にはおのずと涙がにじんでくるんだ。濁ったこの目も生きているから…。
頭が少しあつい。なんだか眠くなってきた。