飛行機雲の人
赤
今日もまた、晴天。どこまでも続く、あついあつい空。雲はいない、雨はいない。
夏休み登校二日目。
学校。今日も俺はBと課題をこなしていた。やってもやってもなかなか終わらない。ああ、もう、本当に面倒だ。こうなったのは俺のせいでもあるから仕方ないのだが…。
外は灼熱の太陽。蒸し暑い教室。セミの声が鳴り響いて耳触りだ。頭にわんわんと響く。
あっつい…。
テレビによると今年は猛暑だそうだ。あまりの暑さに嫌になる。
すべての神経が暑さに焼き尽くされて鬱屈してくるんだ…。なんて、夏のせいにするのは半分嘘だ。
そんなことは別に夏に限ったわけでもない。
俺はいつもだるくてイライラしていた。
外では陽気に振る舞えているが、俺は基本的にはイライラじめじめした、うっとうしい男だ。
うざい、俺を一言で表すならそんな感じかもしれない。
我が家の口の悪い女たちに、「女の日」のある男と言われた(もっと直接的な言葉で)。
血なんて流れねえのに。やってられない。
自分の血なんて一滴も見たくもない。吸血鬼じゃあるまいし、見たいわけがないだろう。
思考も赤黒い血のようにぐるぐる濁っている。
血、赤。
目の奥が真っ赤に染まるように感じた。
…ああ、ああ、もう暑さで限界だ。大きく空気を吸い込んで、息をゆっくり吐いた。
目を閉じる。少し休憩しよう…。まあまあ進んだしいいよな…。俺は机に突っ伏した。
瞳の暗闇の中、ぐるぐるした感情を心の奥底に沈めようとする。
これじゃまるで、暑さで心が茹であがったみたいだ。もう俺はどうかしている。嫌だ。心の中で自虐的な笑みを浮かべる。
目の奥、赤い血の色と黒い闇が混ざって流れてゆく。ゆっくりと静かになる。遠くへ遠くへ。
だんだん、だんだん、消えていった。
瞳を開ける。黒い瞳。
心がすこし冷えた。