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冬野すいみ
冬野すいみ
novelistID. 21783
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飛行機雲の人

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今日もまた、晴天。どこまでも続く、あついあつい空。雲はいない、雨はいない。





夏休み登校二日目。

学校。今日も俺はBと課題をこなしていた。やってもやってもなかなか終わらない。ああ、もう、本当に面倒だ。こうなったのは俺のせいでもあるから仕方ないのだが…。

外は灼熱の太陽。蒸し暑い教室。セミの声が鳴り響いて耳触りだ。頭にわんわんと響く。

あっつい…。

テレビによると今年は猛暑だそうだ。あまりの暑さに嫌になる。
すべての神経が暑さに焼き尽くされて鬱屈してくるんだ…。なんて、夏のせいにするのは半分嘘だ。
そんなことは別に夏に限ったわけでもない。

俺はいつもだるくてイライラしていた。
外では陽気に振る舞えているが、俺は基本的にはイライラじめじめした、うっとうしい男だ。
うざい、俺を一言で表すならそんな感じかもしれない。
我が家の口の悪い女たちに、「女の日」のある男と言われた(もっと直接的な言葉で)。
血なんて流れねえのに。やってられない。
自分の血なんて一滴も見たくもない。吸血鬼じゃあるまいし、見たいわけがないだろう。
思考も赤黒い血のようにぐるぐる濁っている。

血、赤。

目の奥が真っ赤に染まるように感じた。
…ああ、ああ、もう暑さで限界だ。大きく空気を吸い込んで、息をゆっくり吐いた。
目を閉じる。少し休憩しよう…。まあまあ進んだしいいよな…。俺は机に突っ伏した。
瞳の暗闇の中、ぐるぐるした感情を心の奥底に沈めようとする。
これじゃまるで、暑さで心が茹であがったみたいだ。もう俺はどうかしている。嫌だ。心の中で自虐的な笑みを浮かべる。
目の奥、赤い血の色と黒い闇が混ざって流れてゆく。ゆっくりと静かになる。遠くへ遠くへ。
だんだん、だんだん、消えていった。

瞳を開ける。黒い瞳。

心がすこし冷えた。

作品名:飛行機雲の人 作家名:冬野すいみ