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海野ごはん
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novelistID. 29750
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これは明け方のバーのマスターの物語

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アン・サリーの歌声の中で、寝静まったみんなを背景にして僕らは飲んだ。
『楽しかったね、今日の誕生パーティー』
彼女はグラスの中の氷を指でまわしながら言った。
外は、しんと寒そうだ。
窓から見える歩道が凍ってるように見える。
僕も椅子を引っ張り出し、疲れた腰を落とし、
彼女が正面に見えるように差し向かいに座った。
目鼻立ちの通った、気の強そうな顔がすぐ目の前に見える。
美人だ。
  
『マスター、2月が終わったら、私ニューヨークに行ってくる』
『へ~、また、どうして?』
『世界の中心みたいだから。1回は行っておきたいの。マスター行った事ある?』
『ああ、行った事あるよ。確かに世界の中心みたいだったね。
いろんな色の人間がいっぱいで、いろんな雰囲気があちこちに溢れて、
世界中の国が集まったようなとこだったよ』
  
『おもしろかった?』
『めちゃ、くちゃ、よかった。写真撮りまくりだった』
『今度見せて』
『ああ、いいよ』
僕らはニューヨークの事を話し合った。
時間がゆっくり過ぎていく。