【無幻真天楼第二部・第三回】きみぼく
「なにしとん」
「京助ある」
「おかえりある」
パタパタと尻尾を振りながら阿分が京助の肩にのぼる
「暑い;」
うざったそうにした京助が緊那羅の部屋の戸に目を向けた
「緊那羅寝てるある」
「みたいだな」
「我のせいある」
「は?」
阿の尻尾が下がった
「お前のせいで緊那羅寝てる…ってなんぞ;わけわからん」
阿を肩からひっぺがして抱き上げた京助が聞く
「緊那羅考えすぎてたある。だから体動かせば頭は使わねぇあるから頭休まるとおもったある…」
「ますますわからん;」
ぽそぽそ話した阿を胸に抱くと緊那羅の部屋の戸を少し開けて中を覗いた
見えたのは緊那羅の背中
「…寝てるな」
「寝てるというか気を失ったある」
「気を失って寝てるある」
「気を失った…って…」
京助が静かに戸をあけると部屋の中に入り静かに戸をしめ静かに緊那羅に近づいた
ほんのり薄暗い部屋の中
見下ろした緊那羅の横顔には擦り傷があった
「何したん…」
「…体動かしたある…」
「阿は緊那羅が考えないようにしたかったある」
「…すまん;やっぱよくわからん」
阿と分の話を京助が片手をあげて止める
「緊那羅…操っていってたある」
京助がはっとして緊那羅を見た
まだ開きそうにない目
ぐちゃぐちゃの髪
薄手のタオルケットがかけてある体
「…操ちゃん…か…」
「操って緊那羅あるか?」
ぽつりと京助が口にした名前に阿が聞いてきた
作品名:【無幻真天楼第二部・第三回】きみぼく 作家名:島原あゆむ