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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼第二部・第三回】きみぼく

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夏の間は雨戸ではなくカーテンをしている縁側
そのカーテンを開ける
山の向こうから少しだけ朝日が見えた
栄野家で緊那羅か母ハルミがだいたい一番早く起きる
操はどうだったんだろう
「…はぁ…;」
また考えてしまった
考えないようにすればするほど考えてしまうもう一人の自分のこと
そして今の自分と比べてしまう
カラカラと縁側の引き戸を開けると朝の空気が流れ込んできた
少し肌寒いと思いながら置いてあったサンダルに足を入れて庭に降りた

この庭で操と京助は何をして遊んだんだろう

振り返った縁側を見る

この縁側に座って操と京助は何を話したんだろう

数歩下がって家を見上げる

この家で操と京助は…

自分であって自分じゃないもう一人の自分が羨ましい、そう思うようになったのはいつからだろう

「早いな緊那羅」
低い声で名前を呼ばれ緊那羅が驚く
「竜…」
「おはようさん」
甚平姿の竜が緊那羅の開けた戸から顔を出していた
「おはようだっちゃ。ハルミママさんも起きたんだっちゃ?」
「ああ」
伸びをしながら答えた竜
「何か聞きたそうだな緊那羅」
「えっ…」
ゆるく風が吹いた
しばしの沈黙
緊那羅がぎゅっと手を握る
「操のこと…か?」
竜に先に言われて一瞬驚いた緊那羅だったがゆっくりと頷いた
「話してもいいが…お前は【緊那羅】だ」
「わかってるっちゃ…わかってるけどでも知りたいんだっちゃ…京助が好きだった操がどんな人だったのか…」
「知ってどうする?操に近づくのか? 【緊那羅】をやめて操になるのか?」
「ちが…」
反論しようとした緊那羅が見たのはクックッと笑う竜
「からかいがいがあるところは操も同じだな」
「なっ…;」
「ハッハッハ」
ヒラヒラと手を振りながら竜が家の奥に入っていった