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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼第二部・第三回】きみぼく

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午前5時
うつぶせの体勢からむくりと起き上がった緊那羅が目をこすって伸びをした
「あふ…」
小さくあくびをしたあと立ち上がってカーテンを開ける
夏から比べると少し薄暗いようにも感じられる朝
こっちで迎える朝はこれで何度目になるんだろう
ふとそんなことが頭をよぎった

【時】が来る

上から言われてこっちにきて
京助と出会って
そして

【時】がこなければわからなかったこと

もう一人の自分がいたこと

それが京助にとって大切な大好きな人だったこと

「…操」
小さく口にしたもう一人の自分の名前
小さく出たため息
考えないようにしているのに考えてしまう
ボサボサの髪を指で軽く解かして耳にかけると敷いてあった布団を畳んで押し入れにしまった
ハンガーにかけてあったタオルを手にして廊下に出ると洗面所へ向かう
まだ誰も起きていない家の中は静かで心なしか少し不思議な感じがした
洗面所へ向かう途中の分かれた廊下で足を止めた緊那羅がふと洗面所ではない方を見た
3つ並んだ襖の一番奥の部屋が京助の部屋
何故か苦しくなった胸を掴んだ緊那羅が足早に洗面所に向かった
昨晩の風呂の匂いがまだ少し残っている脱衣場兼洗面所
洗濯機の前に置かれたかごの中には汚れ物が洗われるのを待っていた
タオルを洗濯機の上に置いた緊那羅が髪結い用のゴムで髪を緩く束ねると洗面台の鏡と向き合う
また浮かんできたもう一人の自分の名前
ぶんぶんと頭を振った緊那羅が蛇口を捻った
顔を洗った緊那羅が緩く縛っていた髪をほどいてとかすと高い位置でくくる
いつもの髪型
前に一回京助に邪魔じゃないのかと聞かれたこともあった金に近い髪を何気なく手に取った
操だったときこの髪はどんな風に結われていたんだろう
「ダメだっちゃダメダメ;」
また操の事を考えてしまった緊那羅が自分に言い聞かせて洗面所を後にした