【無幻真天楼第二部・第三回】きみぼく
「お前は緊那羅だ」
京助が言った
「お前は操ちゃんでも他の誰でもない緊那羅っつー緊那羅だ」
「きょう…すけ…」
「お前が緊那羅じゃないならお前は誰だよ…初めて会った時お前自分で言ったじゃん緊那羅だって」
デコとデコをくっつけたまま京助が言う
「お前は誰だ?」
「わた…し…」
「言ってみ? 初めて会ったときみたいに…さん、はい我が名は?」
「っ…緊那羅…」
「…よくできました」
まるで小さな子供を相手にしているかのような京助
「俺はお前を最初から緊那羅ってしか見てねぇし」
「京助…」
「だからもう泣くな; どうしていいかわからん;」
「京助…っ…」
「泣くなってんのに何で泣くか;」
泣くなと言う京助の言葉に反して再び泣き出した緊那羅が嗚咽をあげる
頭突きの延長でくっつけていたデコを放すと緊那羅が目を擦り鼻水を啜った
しばらくただ緊那羅を見ていた京助の手が緊那羅の頭を撫でるとヒッと緊那羅が息を吸う
「俺は…お前が緊那羅だから…だな…その…」
緊那羅の頭を撫でながら京助がボソボソ言う
「…緊那羅…だから…」
なかなか次の言葉が出てこない
言いたいことは決まっているのにそれが言葉に声になってくれない
作品名:【無幻真天楼第二部・第三回】きみぼく 作家名:島原あゆむ