【無幻真天楼第二部・第三回】きみぼく
虫の声が響く
月明かりに照らされた部屋の中の京助と緊那羅はどちらも動かずただお互いを見ていた
「んなぁあああああ!?;」
かなり間を開けて京助が声を上げた
上げてから夜中だと思い出して自らの口を押さえる
「…私…京助がす」
「だらっしゃっ!!;」
「んぶっ;」
言いかけた緊那羅の口を京助が両手で勢いよく塞いで言葉を止めた
緊那羅の口に手を当てた京助が下を向く
その京助の手に緊那羅が手を添えた
ぴくっと反応した京助が少し顔を上げる
真っ直ぐ京助を見ている緊那羅
真っ直ぐ緊那羅を見れない京助がまた下を向く
京助の手に添えられた緊那羅の手に少し力が加わって緊那羅の口から京助の手がずれた
「京助」
呼んでも返事をしない京助
「ちゃんと聞いて欲しいっちゃ」
それでも緊那羅が続ける
「私…ね…京助が好きだっちゃ。前から好きは好きだったと思うんだけど…私…今は前と違う好きなんだっちゃ」
緊那羅が京助の手を握った
「…私は…緊那羅…だっちゃ…よね…? 京助は緊那羅として私に接してくれてるんだっちゃよね…? …私は緊那羅として京助が…」
緊那羅の声が震えて詰まって京助が顔を上げた
鼻水と涙を流す緊那羅
京助の手を握っていることでそれらを拭えない
「わた…し…っ」
息を吐いた緊那羅が鼻水を啜る
「私操と一緒は嫌だっちゃ…」
京助の手を握っる緊那羅の手の力が強まった
「操より…操より私…っ…操より私の方が京助が好きだっちゃ…っ…」
嗚咽混じりに言った緊那羅が咳き込む
「京助…っ…ぅ…」
ポタポタと畳に落ちた緊那羅の涙か鼻水
黙ったままの京助
「や…だ…ぁ…」
緊那羅ひっひっと泣きしゃっくりを上げ始めた時京助が思い切り息を吐くと
ゴン
緊那羅目掛けて頭突きをかました
作品名:【無幻真天楼第二部・第三回】きみぼく 作家名:島原あゆむ