【無幻真天楼第二部・第三回】きみぼく
「緊那羅」
京助が緊那羅を呼ぶとぴくっと緊那羅の肩が動いてゆっくりて緊那羅が振り向いた
京助の気配に全然気づかなかった
それなのに京助は何の前触れもなく緊那羅の一番欲しかったものをくれた
「何してん」
逆光で泣き顔だとわからないのか京助が緊那羅に聞く
「緊那羅?」
聞いても何も返してこない緊那羅に京助が部屋に足を踏み入れた
広さはあれど積み上げられて物置化している部屋は狭い
「…鼻水でてんぞ;」
緊那羅が無言のまま京助を見上げた
「さっき俺の部屋の前にいたろ。…何か吐き出したいこととかあったんじゃねぇのか? 入ってくりゃよかったんによ」
京助がしゃがんで緊那羅と目線を合わせる
「…何か言え」
何も返してこない緊那羅に京助がデコピンをすると緊那羅がうつむいた
「うぉ; すま…痛かっ…」
力が強かったのかと慌てて謝った京助がふと緊那羅が伸ばしかけてた手に気づいた
ゆっくりと緊那羅の手が京助に近づいて京助のシャツを軽く掴む
「…緊那羅…?」
「…っ…」
名前を呼ぶとシャツをつかむ力が強くなった
緊那羅の肩が小さく上下して嗚咽が聞こえた
「緊那羅…ぅお!?;」
ゴン
「いっ…て; お前なぁっ!!」
いきなり緊那羅が京助に抱きついて京助が後ろにたおれ頭を荷物にぶつけた
「…しょっぱいなぁ…ったく…;」
怒鳴りかけた京助が自分の胸に顔を押し付けている緊那羅を見てため息をついた
作品名:【無幻真天楼第二部・第三回】きみぼく 作家名:島原あゆむ