【無幻真天楼第二部・第三回】きみぼく
「暑い…;」
そうぼやいた京助の両脇には丸くなって眠る阿分
「…寝れん; 暑くて寝れん…;」
体を起こした京助が時計を見ようとして途中で止まる
「今…なんかいた…か?」
京助が止まり見たのは部屋の戸
閉められた戸の向こうの廊下に確かに何かの気配を感じて京助が立ち上がった
戸に手をかけて開ける
誰もいなく何もない廊下に顔をだした京助がまるで横断歩道を渡るときの様に左右を見た
「…気のせい…か?」
ボリボリと頭をかいた京助が廊下に出る
「…気のせいじゃ…ねぇ?」
一歩踏み出した足の裏に微かに感じたぬくもりはそこに誰かがいたということ
静まり返っている家の中
「誰だ?」
気になりだした京助がとりあえず茶の間のある左に進む
途中にある緊那羅の部屋の戸が少しだけ開いているのに気付き京助が足を止める
そっと中を覗くとそこには布団しかなく緊那羅の姿はなかった
「…まさか…」
京助が茶の間ではなく今来た方向に足早に進む
自分の部屋を通り越して向かった場所
そこにいた緊那羅は入り口に背を向けて少し上を向いて座り込んでいた
開けられた窓から入ってきた風は冷たい
作品名:【無幻真天楼第二部・第三回】きみぼく 作家名:島原あゆむ