【無幻真天楼第二部・第三回】きみぼく
まだ熱い顔に冷たい枕が気持ちいい
『皆わかってると思うわよ? 京助が緊ちゃんに甘えてるって…緊ちゃんが好きなんだって、ね』
母ハルミの言葉を思い出すとまた顔が熱くなる
嬉しいようで恥ずかしいようで熱くて苦しくて緊那羅が何度も寝返りをうつ
秋になって少し冷えるくらいなのに体は熱帯夜のようでなかなか寝付けない
「京助が…私に甘えてくれてる…操としてじゃなくて私として私に…」
緊那羅が呟いた
「…好き……っ;」
その二言を口に出すと心底恥ずかしくなって緊那羅が布団に潜った
京助本人から聞いた訳じゃないのにどうしてかドキドキと胸が暴れてうまく息ができない
なにか胸につっかえているようで
きっとそれはなんなのか心ではわかっている
でも頭ではまだ整理がついていないのかわからない
がばっと緊那羅が起き上がった
暗くて時計は何時かわからない
それでも緊那羅は立ち上がって部屋の戸を開けた
ひんやりした廊下
小さく聞こえる虫の声
緊那羅が一歩足を進めるとキシッと廊下が鳴った
十五夜が近い月は楕円に空にあって部分で明るく家の中を照らしている光で緊那羅の影ができた
たぶんまだ起きてるやつもいるのだろうが戸が閉まっていてわからない
そんな部屋の前を通りふと緊那羅が足を止めたのは京助の部屋の前
緊那羅が手を伸ばしかけて引っ込めてまた足を進めた
作品名:【無幻真天楼第二部・第三回】きみぼく 作家名:島原あゆむ